<日本の岐路 2月をつづる>「密室」はあちこちに 政治部長・高山晶一

2021年2月28日 06時00分

新型コロナウイルス緊急事態宣言について6府県を月末に解除すると表明し、記者団の質問に答える菅首相=26日午後、首相官邸で(伊藤遼撮影)

 「これから大切な予算の時期。議員辞職はせずに、地元のために予算を取るために頑張っていきたい」
 新型コロナウイルスで緊急事態宣言が出ている夜に東京都内の高級ラウンジを訪れ、自民党を離党した白須賀貴樹衆院議員(千葉13区)が、議員辞職しない理由についてこう語ったことに違和感を持った。
 白須賀氏は「私の選挙区は予算関係を含め、どうしても自民党の衆院議員がいないと大変厳しい市町村がある」とも説明。地域の声を吸い上げ、国策に反映させるのは国会議員の大切な役割だが、地元のことだけ考えて予算をつけるような利益誘導は、やってはいけない行為だ。そもそも国会議員は憲法43条で「全国民を代表する」存在とされ、地域の代表ではない。
 どの地域にどれだけ税金を投入するかは、公平公正な政策判断で決まらなければならない。自民党出身の国会議員がいる地域が、より潤沢に国費を受け取れるとしたら、国民から見えない場所で働いた力学で、不公正に予算配分が決まってしまうことになる。
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 東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長を辞めた森喜朗元首相が、川淵三郎・日本サッカー協会元会長を後継指名して「密室人事」と批判され、実現しなかった。正規の協議ではなく、国民の目に触れない調整だった点がよく似ている。同じたぐいの話が今月、たくさん出てきた。
 菅義偉首相の長男正剛氏が勤める放送事業会社から、許認可権を持つ総務省の幹部が接待攻勢を受けていたことが判明。業務認定が更新された昨年12月の直前に接待が集中していたことなどから、密室の談合で放送行政がゆがめられたのではないかと疑われている。贈収賄事件で在宅起訴された「アキタフーズ」グループの元代表から、農水省幹部が接待を受けていたことも明らかになった。
 今月施行された新型コロナ対策の改正関連法も、国民に行政罰を求めることが柱なのに、自民党と立憲民主党による水面下の修正協議で内容が固められた。
 水面下の調整がすべていけないわけではない。しかし、法律や予算配分、許認可といった国政上の意思決定は、透明かつ公正でなければ国民は納得しない。だれからも見える場所で合意形成するという民主主義の原則にも反する。
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 安倍政権時の2013年4月、参院予算委員会でこんなやりとりがあった。自民党の山東昭子氏が、公務員の会食に触れ「官僚と業界の人が本音で語り合うことも意味がある。厳しすぎるルールを見直す時期に来ているのではないか」と質問。当時、官房長官だった菅首相は、公務員倫理法の精神が浸透していないとしつつ「職務上必要な情報収集や意見交換は行うべきだ」とも答えている。
 首相は今回の正剛氏による接待問題で、放送行政がゆがめられたのかという本質部分を積極的に説明していない。密室政治が自民党政権の体質と思われないために、今すべきことがあるのではないか。

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