トランプ前政権の米・サウジ蜜月関係から一変 バイデン大統領は人権重視、対イラン核交渉を念頭に

2021年2月27日 20時55分

カショギ氏=2018年9月、英ロンドンで、MIDDLE EAST MONITOR提供(ロイター・共同)


 【カイロ=蜘手美鶴、ワシントン=金杉貴雄】サウジアラビアの著名記者ジャマル・カショギ氏が殺害された事件で、米国が26日に公表した報告書ではサウジのムハンマド皇太子の関与が明確に指摘された。人権問題を重視するバイデン政権発足で、トランプ前政権当時は蜜月だった米・サウジの関係は一変。米側の対応には対イランの核交渉も念頭にある。ただ、決定的対立の回避では思惑が一致している。

◆サウジの皇太子が「殺人に関与」と異例の認定

 「われわれは、カショギ氏を拘束または殺害する作戦をムハンマド皇太子が承認したと評価する」
 機密解除された米国家情報長官室の報告書には最も重要な結論が真っ先に明記されていた。ムハンマド氏は国際会議で各国首脳とも会談するサウジの事実上の最高権力者。米国が同盟国のトップを「殺人に関わっていた」と認定したのは異例の事態だ。
 トランプ前大統領は、イラン敵視で立場が一致するムハンマド氏と密接な関係を築き、情報機関がまとめていた今回の報告書も機密とし、公表を拒否した。

◆サウジの対イラン強硬派を抑える狙い

 バイデン氏は、強権的な他国指導者を称賛し人権を軽視するトランプ氏を批判。米国在住だったカショギ氏殺害の究明と責任追及は、大統領選の公約だった。

サウジアラビアのムハンマド皇太子=2020年11月、リヤドで、サウジ王室提供(AP)

 バイデン氏がサルマン国王を自らの相手とし「ムハンマド氏外し」を進めるのは、核合意への復帰を目指しイランと協議するため、対イラン強硬路線を主導するムハンマド氏を抑える必要があるからでもある。
 アラブセンター戦略研究所(エジプト)のモハンマド・サデク博士は「バイデン氏は前政権と近かった皇太子の重要度を低下させたがっている。前政権時と同じ扱いはしないだろう」と指摘する。

◆制裁は科さずに決定的な対立は回避

 一方で米国にとって中東の安定のためには地域大国サウジの協力は不可欠で、決定的対立には発展させたくない。殺人関与を認定したはずのムハンマド氏に制裁を科していないのはそのためだが、米議会からは制裁を求める声も上がっており、「二重基準」との批判を受ける恐れもある。
 サウジ側も報告書公表に反発しているものの、人権重視のバイデン氏に対応するため、問題改善に向けた動きがみられる。
 サウジは今月10日、2018年から拘束していた女性人権活動家ルジャイン・ハズルールさんを釈放。人権で改善姿勢を示すことで、米国との対立を避けたい思惑が透ける。
 中東政治に詳しいヨルダン人評論家ザイド・ナワイサ氏は「バイデン氏は中東で『表現の自由』を広げようとしている。ハズルール氏釈放は、サウジがそれを感じ取ったからだ」と指摘するが、バイデン政権への不満を募らせることも予想される。 

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