「福島の子どもたち、健やかに育って」 千葉市の避難男性、縁起物の手作りストラップ600個を届ける

2021年2月28日 06時00分

自宅の一室で制作に励む千代田信一さん=19日、千葉市で

 東京電力福島第一原発事故の避難者として千葉市中央区で暮らす千代田信一さん(79)が、ムクロジの実を使ったストラップを作り、故郷・福島県の子どもたちに贈っている。ムクロジは漢字で「無患子」。「子が患い無し」との意味を持ち、その実は縁起物として使われてきた。「故郷の将来を担う子どもたちが健やかに育ってほしい」。町の大部分が避難指示区域に指定されたままの双葉町に続き、町民の多くが一時避難した川俣町の役場に3月2日、約600個を届ける。(保母哲)

◆福島第一原発から数キロの双葉町内で被災

 10年前の3月11日、福島第一原発から数キロの双葉町内に住んでいた千代田さんは、畑で農作業をしていた。強い揺れとともに地面にへたり込み、両手で草をつかんで何とか耐えた。近くの田んぼは液状化で水を噴き出し、地面には割れ目が。「どうなるんだ」と恐怖心に震えた。
 翌日、福島第一原発を抱える双葉町は防災無線などで、全町民に約60キロ北西の福島県川俣町に避難するように連絡。千代田さんは妻と息子夫婦、孫2人や知人とともに車で双葉町を出て、川俣町で一夜を過ごした後、妻の実家がある千葉県四街道市へ。2年半後、千葉市へ引っ越した。

◆「お世話になった川俣の人のために」

 川俣町の人たちは多くの双葉町民のため、炊き出しのほか、古着などの支援物資を提供してくれた。全国に散った友人らの苦労をかみ締めながら、千代田さんは「お世話になった川俣の人のために、何かしたい」と思い続けてきた。

千代田さんが手作りしたストラップ

 四街道での避難生活中、知人がムクロジでアクセサリーを作っていることを知り、千代田さんも自己流で制作。2年ほど前、双葉町の子ども用に約50個を町役場に届けた。東日本大震災から10年の節目を迎え、「次は川俣町の子どもたちにも」と役場に連絡。同町の小学校に通う全児童と入学予定児、教職員分の計約600個をほぼ作り終えた。
 ストラップは長さ10センチ。千葉県内で採取するなどした直径1センチ余りのムクロジの実のほか、ハート形や「福」「寿」と記したビーズを組み合わせた。「福島で暮らす子どもたちが厄災に遭わないように」。千代田さんはムクロジに思いを託している。

 ムクロジ(無患子) 高さ10メートル以上になる落葉高木。実は直径1~2センチで堅いため、古くから羽子板の羽根の重りや数珠などに使われ、厄よけや無病息災の願いを込めて使われてきた。景気を跳ね(羽根)上げるという意味から、羽根や羽子板は商売繁盛の縁起物とされている。

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