<選ぶちば2021 知事選争点の現場から>(中)問われる災害対応 危機管理の甘さ 台風で露呈

2021年2月28日 07時05分

台風15号直撃から1年半になるが、いまだに雨漏りを防止するブルーシートが点在する=鋸南町岩井袋で

 県民生活に大きな打撃を与えた二〇一九年九月の台風15号で、町全体の約七割に当たる住宅が被災した鋸南町。あれから一年半、町には今でも窓が吹き飛んだ家屋や雨漏り対策用のブルーシートを屋根に張った光景が点在する。
 「外の木が激しく揺れ、洗濯機の中にいるようだった。停電になり朝になって外に出てみると、倒木で自家用車のフロントガラスが割れていた」。当時を振り返るのは、同町大六でカフェ&ガラス工房「海遊魚」を経営する東(あずま)愛乃さん(42)。暴風雨で窓が壊れ、店内のキッチンは水浸しとなり約一カ月間の休業を余儀なくされた。災害派遣の自衛隊やボランティアには今でも感謝している一方、県の対応には物足りなさを覚えた。
 森田健作知事が鋸南入りしたのは九月二十日で、台風が上陸してから十一日後。「地元に寄り添う姿勢が足りないのではないか」と疑問がわき、被災者を勇気づけるメッセージの発信がなかったことも気になった。後日、知事が被災直後に県庁を離れて公用車で芝山町の私邸に戻ったり、私用で東京都内に外出を繰り返していたことが発覚。「リーダーシップに欠ける知事だ」と怒りを覚えた。
 鋸南町では、台風で家に住めなくなったことから転出者が後を絶たず、過疎化はさらに深刻になった。町住民保険室によると、毎月一日現在の総人口は台風が上陸した一九年九月時点が七千七百四十五人だったのに対し、今年二月時点では七千三百八十八人と三百五十七人減少。新型コロナウイルスの感染拡大で人出が制限され、頼みの観光業も打撃を受け、行政の支援は不可欠だ。
 台風被災時は、県の初動態勢の遅れを巡り、市町村から「報告待ち」の情報収集体制が問題視された。台風が県内に上陸して半日以上過ぎた九月九日夕方までの家屋被害の報告は十七市町の約二百軒。現実の被害は八万軒以上で大きく乖離(かいり)していた。多くの市町村は職員の人手が足りず、県への報告を後回しにせざるを得なかったが、県はその窮状を察することができなかった。
 危機管理の甘さはその後も続いた。一九年十月の記録的豪雨では土砂崩れで四人が死亡し、土砂災害警戒区域に指定されていなかった場所も含まれた。当時の県内の同区域指定率は30%台で、全国平均の80%台を大きく下回り全国ワーストで「防災後進県」だと露呈した。ある県議は「担当課任せの森田県政の長期化で、職員が決められたことしかやらず、期限が近づきようやく重い腰を上げる『お役所体質』が県庁内に染み付いている」と指摘する。
 「県は今まで、近隣県に右にならえで政策を決定していたと思う。そうではなく、地域の実情に応じ、柔軟な対応をしてくれる人を知事に選びたい」。東さんはそう願う。(山田雄一郎、中谷秀樹)

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