<今、変化を 国際女性デー>地方防災会議 県内、女性委員は1割 5市町村ではゼロ 本紙アンケート

2021年2月28日 07時11分
 災害対策に女性の視点を反映する体制ができているか、本紙が今月、県内全六十三市町村にアンケートしたところ、地方防災会議の委員の女性割合は平均で一割にとどまることが分かった。五つの自治体ではゼロ。役所の防災担当課の職員にも、十九の自治体で女性がいない。十年前の東日本大震災などを教訓に、国は女性の参画を進めるよう求めているが「特に取り組んでいない」と答えた自治体もあった。 (柏崎智子)
 各自治体がつくる地方防災会議は、地域の防災計画策定時などに幅広い意見を聞くため、庁内関係部署のほか自治会、警察、教育などの分野の委員を委嘱する。各機関を代表して参加する委員は男性が多く、女性の意見が反映され難いため、国は三割を女性にするよう求めている。
 しかし、目標達成には程遠い。アンケートの結果、平均で市が13・9%、町村は7・7%で、三割を達成したのは八潮市の31・5%のみ。市は10%台、町村は10%未満が最多だった。
 ゼロだったのは蓮田市、吉見、寄居、皆野町、東秩父村。蓮田市の担当者は「過去にも女性はいない。女性を推薦するよう働き掛けてこなかった。次回の委嘱では何らか考えたい」と話した。吉見町は、防災担当課職員にも女性がいない。担当者は「人事の話で、防災面から女性を増やす啓発はしていない」とした。
 アンケートでは、避難所の開設や運営方法を定めたマニュアルに女性への配慮を記載しているか、項目を挙げて聞いた。男女別トイレや授乳室の設置はほとんどの自治体であったが、託児所の設置、液体ミルクの準備は「ない」とした自治体が多い。また、暴力やセクシュアル・ハラスメントの対策を取るよう求める記載は二十五市町村が「ない」と回答した。
 運営スタッフなどに女性を含めることは三十八自治体が定める一方、具体的な割合は決めていないか「一人以上」「複数」などが多く、三割以上としているのは所沢、北本、吉川、蕨市、松伏町だけだった。
 過去の災害では、女性用の下着や着替えスペース、乳児用おむつなどの物品や設備の不足が課題となった。性暴力も発生。運営スタッフに男性が多く、女性が欲しい物や被害を相談できない状況もあった。
 熊谷市はアンケートに、東日本大震災の経験から「生理用品、アレルギー対応粉ミルクなど備蓄している」と回答。また「子育て支援センターなどに母子優先避難所を開設する体制を整えた」(東松山市)、「女性専用の相談窓口の設置をマニュアルに明記した」(久喜市)など、改善への取り組みも見られた。

◆県男女共同参画推進センター・薄井篤子さん 女性の視点 多様な声反映

 多くの女性が困難に直面した東日本大震災から十年。女性が参画する災害対策の重要性が叫ばれてきた一方、市町村の取り組みは十分に進んでいない。この問題に詳しい県男女共同参画推進センター(With You さいたま)の薄井篤子さん(62)は「危機管理は男性の分野という考え方が根強く残っている」と指摘し、意識改革を訴える。
 「下着や生理用品をくださいとは男性に言えない」。震災直後、福島県民らが身を寄せたさいたまスーパーアリーナ(さいたま市)。当時、ボランティアとして活動した薄井さんは避難してきた女性たちから、こんな声を受け取った。
 大量に集まった支援物資を運び、配るのは男性スタッフが中心。薄井さんらはアリーナ近くの同センターに女性用の物資を移し、気兼ねなく選べるようにした。口紅などの化粧品を求める人もおり、足りないものは買いに走った。
 震災から半年余り後に訪れた宮城、岩手県の避難所では、「食事を用意するのは女性ばかり」という苦悩も聞いた。過酷な状況に置かれた災害時でも、女性たちは日ごろの固定的な性別役割を背負わされていた。
 こうした課題を受け、国は避難所運営や物資の備蓄に女性の視点を取り入れた指針などを策定。薄井さんは「大きな前進」と評価する。ただ、市町村レベルへの浸透は道半ば。「災害が起きると関心は高まるが、優先順位はまだまだ低い」と実感する。
 スーパーアリーナに避難した女性の中には、障害児や介護が必要な親を連れた人もいた。薄井さんは「女性の声を通して子どもや高齢者、障害者らのニーズがくみ取れる。女性の視点を反映させることは女性の優遇ではなく、多様な人への配慮にもつながる」と強調した。 (近藤統義)
<うすい・あつこ> 県男女共同参画推進センターの事業コーディネーター。女性の視点を入れた防災フォーラムや市町村への出前講座の企画に関わる。県内で暮らす東日本大震災の被災者が集い、センターで月2回開く「さいがい・つながりカフェ」の立ち上げにも尽力した。

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