作家の向田邦子さんはかなりの早口だったそうだ。電話で用件を…

2021年2月28日 07時15分
 作家の向田邦子さんはかなりの早口だったそうだ。電話で用件を伝える時など、つい早口になり、相手から「恐れ入りますが、もう一度」と聞き返されてしまう▼用件を繰り返すのだが、やはり伝わらず、「念のためもう一度」と懇願される。結局、同じことを三度。これなら「ゆっくりと一回しゃべったほうがよほど早かったが、持って生まれた癖はなかなか直らない」(『霊長類ヒト科動物図鑑』)。こういう方はいらっしゃる▼話は新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言である。対象だった十都府県のうち、愛知、岐阜の東海二県、大阪、兵庫、京都の三府県、福岡県の計六府県については期限の三月七日を待たず、週明けに先行解除される▼解除されない東京、神奈川などの首都四都県は取り残された気分だろうが、ここは向田さんの伝わらぬ早口を思い出すしかないか。宣言解除を急いだところで感染拡大を抑制できなければ、意味はあるまい▼事実、東京の新規感染者の減少ペースは一時に比べ鈍っている。感染力がより強いと聞く変異株の影響も心配で、およそ解除は難しかろう▼よその県は解除されると聞けば気も緩みがちだが、「よそはよそ、うちはうち」でいま一度、対策に力を入れたい。先行解除の六府県も同じこと。ここで宴会、花見だと浮足立てば、待っているのは「恐れ入りますが、もう一度」である。

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