「果汁のよう」甘い江川酒 復活・戦国の味、4月上旬蔵出し 薄い琥珀色 寄付の返礼品で提供

2021年2月28日 07時35分

万大醸造で行われた江川酒を搾る作業

 現伊豆の国市の韮山地域で代官を務めた江川家が造り、戦国時代には織田信長、豊臣秀吉、徳川家康にも贈られた「江川酒(えがわしゅ)」を、江戸時代の製法書を基に復活させる作業が大詰めだ。製造する伊豆市の万大醸造で22、23日、もろみから酒を搾る作業があった。完成・蔵出しは4月上旬。今回は一般販売はせず、江川家の功績を広める活動に賛同、寄付金を出してくれた人への返礼品とする予定だ。 (上田融)
 「うまい」。搾った原酒を試飲した人たちが声を上げた。酒は薄い琥珀(こはく)色でアルコール度数は17%。「こくのある果汁のような甘い酒」。一人がそう評した。万大醸造によると、製法書通りに、現代の日本酒より水を減らして仕込みを行うなどしたため、非常に甘く酸味が強いフルーティーな味わいになったという。約一カ月熟成させる。

薄いこはく色をした原酒

 同醸造によると、酒は七百二十ミリリットルで五百本ほどできる予定。当初は約七百本と見込んでいたが、機械を使わない手搾りにしたことから量が減った。
 江川家は戦国期、伊豆などを治めた北条氏に仕えた。江川酒は、同氏が諸国の大名に贈り、その名が広まったという。秀吉がその晩年に京都で開いた「醍醐の花見」にも運ばせた、という記録もある。
 江戸時代中期に製造が途絶えたため、以来「幻の酒」になっていた。だが昨年、製法書が旧代官屋敷の江川邸で確認された。
 酒を復活させる計画は、江川邸を管理する公益財団法人江川文庫学芸員の橋本敬之さん(68)が万大醸造に依頼し始動。県内産の酒米や水、こうじなどの量を製法書の通りに再現する方法で、一月に仕込みを始めた。完成すれば約三百二十年ぶりの復活となる。

約320年ぶりに復活する江川酒のびんなどのイメージ

 出来上がった酒は、世界遺産の韮山反射炉を築造した代官・江川英龍を知ってもらうことを目指す団体「江川英龍公を広める会」に入会(入会・年会費計二千円)し、一口五千円を寄付してくれた人に返礼品として提供する計画だ。寄付受け付けは既に始まっている。橋本さんはまた「来年以降も製造を継続させたい」と語った。
 寄付の方法などの問い合わせは、伊豆の国市内の案内所「まちすけ」=電0558(76)0030=へ。

◆伊豆の国江川邸 製法書など特別展示

 江川酒の製法書や関連する文書などが、伊豆の国市韮山韮山の江川邸で、特別展示されている。四月二十日まで。

江川邸で展示されている製法書

 製法書の題名は「御手製酒之法(おてせいさけのほう)」。全二十八ページで、酒米や水の量、作業日数などを記し、細かく図解している。「他言あるべからざるもの也」と、外部に漏らさないよう注意する一文もある。
 江川家は平安時代末期、現在の奈良県から韮山に移り、酒の製法も持ってきたとされる。江戸時代、幕府の財政難で代官が酒米を手元に保管することが困難になり、酒造りは途絶えた。
 入館などの問い合わせは江川邸=電055(940)2200=へ。

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