日本で広がる抗議の声「民主的な政府を返せ」 クーデターから1カ月、スー・チー氏解放を求めるミャンマー人たち

2021年3月1日 13時00分

 国連大学前でミャンマー国軍によるクーデターに抗議する人たち

 ミャンマー国軍がクーデターでアウン・サン・スー・チー国家顧問らを拘束してから1日で1カ月。日本では在日ミャンマー人らが連日、抗議デモを繰り広げている。東京都渋谷区の国連大学前で2月28日に開かれたデモには約2500人(主催者発表)が集まり、スー・チー氏らの解放を求めた。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると、ミャンマーでは同日、治安部隊の発砲などで、少なくとも18人のデモ参加者が死亡。緊迫する母国の情勢に不安を抱きつつ、抗議活動が熱を帯びている。

国連大学前で独裁への抵抗を示す3本指を掲げ、ミャンマー国軍によるクーデターに抗議する人たち

◆自由への思いを強める若い世代

 「民主的な政府を早く返せ!」。マイクを握った主催者の1人ゾウ・ミン・トゥンさん(49)さんの叫びに、スー・チー氏の肖像を掲げた参加者らが続く。切実なシュプレヒコールが都心のビル街に響いた。
 ゾウ・ミン・トゥンさんは学生時代の1988年、スー・チー氏らが率いた民主化運動に参加。国軍の弾圧で、日本に亡命した。
 この日、ミャンマーでデモを指導した同い年のいとこが逮捕された。「国軍は再び、暴力で民意を奪おうとしている。絶対に許せない」
 2月1日のクーデター後の抗議活動で目立つのは、2、30代の若者だ。2011年にミャンマーが民政移管後、留学や技能実習目的での来日が大幅に増えたことが背景にある。
 若者らはフェイスブックなど会員制交流サイト(SNS)で情報を共有し、デモとネット上で国軍を非難。抗議のうねりを作り出している。都内の専門学校生ミ・ティンギ・トゥンさん(25)は「危険な軍事政権では国に帰れない。次の世代のためにも、闘わなくてはならない」と力を込める。

アウン・サン・スー・チー氏をあしらったマスクとイヤリングを身に着け、ミャンマー国軍によるクーデターに抗議する女性

◆犠牲者拡大の懸念も「活動は終わらない」

 国際的な批判の渦の中、ミャンマー国軍は国内で実力行使を強めている。市民の犠牲が拡大する懸念が膨らんでいる。
 1988年の民主化運動に参加し、現在は都内の飲食店で働くチョウ・チョウ・リンさん(59)はデモからは距離を置く。「抗議活動の末、どんな国にするのか。具体的な方策が見えない」からだ。
 
 在日ミャンマー人社会のリーダーの1人で、88年の運動を経験したチョウ・チョウ・ソーさん(57)は「国軍は平気で国民に銃を向ける」と気をもむ。その一方できっぱりと言う。「5年前にスー・チー氏の政権が生まれ、国民は自由のありがたさを知った。抗議活動が一時的につぶされても、終わりはしない。必ず実を結ぶ」(北川成史)

 ミャンマーの民主化運動 社会主義の独裁政権下にあった1988年、学生を中心にした反政府運動がミャンマー全土に広がった。国家独立の英雄である故アウン・サン将軍の娘アウン・サン・スー・チー氏も加わり、盛り上がりを見せたが、国軍が運動を弾圧し、軍事政権を樹立。スー・チー氏は計約15年間自宅軟禁になった。2011年の民政移管後、スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)は15年の総選挙で勝ち、16年に文民政権を発足させた。20年11月の総選挙でも圧勝したが、国軍は不正選挙だと主張し、クーデターを起こした。

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