<東京名物>海外客は激減だけど… 前を向く

2021年3月2日 06時31分
 2015年に始まり先月終了した連載「東京名物」。取り上げたのは、いずれも外国人に人気の事物ばかり。街中から訪日客の姿が消えて1年。紹介した人たちはこの苦境にどう立ち向かっているのか? 工夫を凝らし闘う姿を再び取材した。 (文と写真/ライター・広山直美)

◆再会と再開を願って

「コロナ収束後は武漢に行って、応援イベントでつながった皆に会いたい」と話す松本さん

 「収束後、真っ先に行きたいのは中国武漢ですね」と、リサイクルショップ「素人の乱5号店」店主の松本哉(はじめ)さん(46)。杉並区の高円寺北中通りで中古品店やゲストハウスを営む一方、著書が韓国や台湾、中国などでも出版される人気作家の顔も持つ。
 「初めはコロナなんて完全に人ごと。中国は大変だと、応援イベントをやって武漢の友達にカンパを送ったりして」。だが対岸の火事はあっという間に日本に上陸。「約八割が外国人客だったゲストハウスは予約ゼロ。営業できなくなった」
 ここでめげないのが「三足のわらじ」を履く松本さん。昨春の緊急事態宣言解除後に再開したリサイクル店は、リモートワーク環境を調えたり、自粛時間でインテリアに凝る人が増えたりで大繁盛。さらに、飲みに行けない夜の時間は執筆にあてた。「本は海外の面白い奴(やつ)らとつながる手段。コロナ後の武器になる」
 今年一月末にゲストハウスは閉店したがリビング部分は解約しなかった。「今は、海外から日本ヤバいと応援される側に。皆が帰って来る場所を作っておきたくて」。残したリビングは、皆との再会、そしてゲストハウス再開への希望なのだ。

◆自転車店で地域に笑顔

修理も整備もお手のものの桑田さん。「自転車安全整備士、自転車技士の資格が役に立ちました」

 「財産をなくしても、命さえあれば再起は可能だと思う」。そう語るのは桑田壮司さん(37)。都内を自転車で巡るツアー「SOSHI’S TOKYO BIKE TOUR」のオーナー兼ガイドとして、旅で覚えた英語で世界中からの訪日客を案内してきた。
 だが、コロナ禍で予約はゼロに。昨春の緊急事態宣言中、事務所を構える新橋周辺は、ビルは暗く人通りも途絶えた。「地域貢献で街を明るくしたい」と、所有の資格を生かし初夏から自転車店を始めた。
 新品販売や修理の他、ツアー用自転車の約半分も中古で販売。ちょうど世間では満員電車を避け自転車が見直されていたころ。周囲に同業店がなく、開店に喜びの声が相次いだ。新たな趣味となり「人生が一変した」と話す人も。「世間話したり差し入れをいただいたり、地域の方と人情味ある交流が生まれました」と桑田さん。
 コロナ収束後は「以前のようにツアーができれば」と、再開用に残した自転車の手入れも欠かさない。なりわいは変えても「根底にある、人を楽しませたい思いは常に同じです」。固い意志と柔軟さ、一見相反する二つの要素が強さの秘密だ。

◆愛される店の原点に

おそろいのモーモーポーズで。左から下里さん、濱津さん、タイ人社員ワッチャラウィーさん

 「本場のモーモーに行きたい」。世界中の日本好きから何度耳にしただろう。「モーモーパラダイス」は、しゃぶしゃぶとすき焼きを、食べ放題の店とは思えないしゃれた内装で楽しめるチェーン店。アジアや米国など国内外に約八十店舗。タイドラマではデートの定番、海外SNSの「食レポ」でも話題の店だ。
 特に人気なのが「歌舞伎町本店」。だが、世界規模の感染拡大に伴い予約のキャンセルが相次ぎ、昨春の緊急事態宣言時には約二カ月間休業を余儀なくされた。
 六月に再開するも、訪日客は皆無の状態。「日本のお客さまを焦点に再始動しようと切り替えました」と支配人の濱津大地(はまつだいち)さん(31)。総支配人の下里公仁明(しもさとくにあき)さん(38)は「創業二十五周年を経た今、愛されるお店作りの原点に返ろう」と、デリバリーや店舗で扱う肉や野菜などの通販、個食が可能な個人向けメニューなど、きめ細かいサービスを充実させた。
 「感染対策への信頼も大切」と濱津さん。「前よりお客さまから元気づける声をいただく機会が増えました。大変な時も楽しむ姿勢で乗り越えたい」と下里さん。世界中のファンが「モーモー本場詣で」を首を長くして待っている。
 ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へ。

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