<社説>ミャンマー情勢 日本は軍諭す役割を

2021年3月2日 07時00分
 軍事クーデターから一カ月のミャンマーでは、国軍がデモの弾圧を強め多くの血が流されている。平和と民主主義を取り戻すため、日本は米国などと国際社会の先頭に立ち事態収拾に動いてほしい。
 映像を見ると、目を覆いたくなる惨状である。市街地に射撃音が響き渡り、徒手空拳のデモ隊は逃げ回る。兵士の放水も激しい。
 軍事政権は拘束中のアウン・サン・スー・チー氏の役職「国家顧問」を廃止。新たな選挙管理委員会は、同氏率いる国民民主連盟(NLD)が圧勝した昨年の総選挙を無効と宣言し「総選挙で不正」との国軍主張を追認した。
 こうした非民主的な軍政への抗議デモは数百万人規模に達した。「不服従」をスローガンに平和的な抗議を試みるが、国軍の武力行使で死傷者は続出。多数が現場から連行され、現地在住の日本人ジャーナリストも一時拘束された。
 以前の軍政下に定められた現行憲法には、国軍が非常時に全権掌握できる規定があり、今回も「憲法に基づいた行動」とクーデターが正当化された。しかし、実際は選挙結果が不満で国政を転覆し、一般市民を武力弾圧している暴挙にすぎない。
 敗れた総選挙の結果を国軍が無効としたのは一九九〇年に続き二度目。二〇一六年にスー・チー氏らが本格的な民主政権を樹立するまで四半世紀もかかった。こんな不合理は繰り返してはならない。
 軍政は今後、NLDを解党して再度総選挙を行って勝ち、実権を握り続ける腹づもりともみられるが国際的な孤立は避けられまい。
 欧米などの経済制裁が始まったが、国軍幹部への個人的な制裁が主で目立った効果はみられない。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)の動きも鈍い。一党支配の加盟国がいくつかあり、隣国タイでは七年前のクーデターを経て今は親軍政権。ASEANは各国の事情から「内政不干渉」の原則を持ち、情勢を静観する中国の動きを見極めているともみられる。
 かつて、日本は英国統治からのミャンマー(当時はビルマ)独立を支援した。一方、同国は第二次大戦中に支配した日本へ戦後補償を求めなかった。こうした経緯から、日本は民主化以前も欧米が距離を置いていた軍政と一定の関係を築いていた。
 今こそ「軍政とのパイプ」を生かし、言うべきを言う時ではないか。日本は、米国などとともに、ミャンマー正常化に向け積極的に動いてほしい。

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