1000基超えるタンク、凍土壁、膨大な人と金を投じた汚染水対策 福島第一原発は今

2021年3月3日 06時00分
 東京電力福島第一原発事故で、現場を悩ませ苦しめてきたのは、毎日大量に発生する汚染水だ。高濃度の放射性物質を含む水を、海へ漏らさず、発生量を減らす-。そのために地中を凍らせて壁を造る前代未聞の工事もするなど、膨大な金と人を投じてきた。事故前に構内に広がっていた松林は消え、立ち並ぶ1000基以上の灰色のタンクが10年を物語る。(小野沢健太、地上からの写真は山川剛史)

①敷地内には、汚染水を処理した水をためるタンクがひしめく。上部左から1、2、3、4号機の原子炉建屋=福島県大熊町の東京電力福島第一原発で

 1月18日、敷地山側にある9階建ての大型休憩所の窓から構内を見渡すと、円筒形のタンクがびっしりと密集している。海沿いの原子炉建屋がタンクの中に埋もれているようだった。

②水漏れのリスクが高いボルト締め型タンクを解体する作業員たち。タンクはさびが目立った=福島県大熊町の東京電力福島第一原発で

 2013年3月に取材した際、東電は工期が約1週間と短い、ボルト締め型タンクの建設を進め、汚染水の保管先確保を急いだ。取材直後に、底部のつなぎ目から汚染水漏れが発覚。完成まで2カ月ほどかかる頑丈な溶接型タンクに置き換えざるを得なくなった。

③ボルト締め型タンクの解体現場。作業員は防護服を着て、顔全体を覆うマスク姿だった=福島県大熊町の東京電力福島第一原発で

 あれから8年、ボルト締め型タンクの解体現場に立った。作業員がさびついたタンク外壁にある足場の手すりに命綱をかけ、機具でボルトを外していた。2月13日深夜に起きた地震では、8基のタンクで足場が地面に落下。老朽化が進む中で危険は増している。
 高さ約10メートルのタンク解体は、1400個ものボルトを外す必要がある。タンクは汚染されてもいる。耐久性よりも早さを優先した結果、かえって工程や作業員の被ばく量が増大することになった。東電と政府の場当たり的な対応が、事故収束作業をより困難にした。

④トリチウム以外の放射性物質を除去する多核種除去設備をメンテナンスする作業員たち=福島県大熊町の東京電力福島第一原発で

 汚染水は原子炉建屋に入った地下水や、炉内への冷却水が事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)に触れて発生する。事故当初は毎日500トンほど発生していたが、建屋周辺の井戸から地下水をくみ上げるなどして、今では1日140トンほどに減った。ただ、根本的な止水のめどは立っていない。
 汚染水の浄化処理の要は、ほとんどの放射性物質を除去する多核種除去設備(ALPSアルプス)。しかし、放射性トリチウムは技術的に取り除けない。タンクには、政府と東電が「処理水」と呼ぶ大量のトリチウムを含む水の保管が続いている。
 政府は、処理水を水で薄めてトリチウムの濃度を国の排出基準(1リットル当たり6万ベクレル未満)の40分の1(1500ベクレル)未満にして海へ放出処分する計画だ。しかし「風評被害が避けられない」と漁業や水産業者を中心に強く反対している。
 増設計画のないタンクは22年秋以降に満杯になる。放出を決めたとしても、準備に2年程度かかるとみられ、タンクの増設は避けられない。甘い見通しで事態を深刻化させた歴史を繰り返すのでは-。疑問と不安を拭えぬまま、解体されるタンクを見上げた。

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