71歳現職の対立候補に34歳女性 国連事務総長選に一石投じたアカンクシャさん「若く、実行する国連に」
2021年3月3日 06時00分
【ニューヨーク=杉藤貴浩】来年からの2期目続投が既定路線とみられているグテレス国連事務総長(71)の対立候補に、身内の国連職員、アローラ・アカンクシャ氏(34)が名乗りを上げ、注目を集めている。本紙の取材に応じた同氏は、現在の国連は創設時の理想から遠いとして「若い世代や女性を代表し、実行力のある組織にしたい」と主張した。
◆インド生まれカナダ育ちの国連職員
「国連事務総長は、運営ではなく広告の最高責任者になってしまっている」。アカンクシャ氏は、立候補の動機について国連の実行力不足を挙げた。「本来の仕事は紛争地や難民についてのリポート作成や演説ではないはず。現場で解決策を実践することだ」
インド北部で生まれ、現在の国籍は18歳で渡航したカナダ。トロントの大学を卒業し、2017年に国連開発計画(UNDP)の監査人になった。国際平和や人権向上を掲げる国連で働くことは「うれしかった」と語るが、「すぐに理想とは違うと気付いた」。
出張でアフリカの最貧国ウガンダを訪れた時のこと。「おなかをすかせた女の子が泥を口に入れているのを見た」が、国連職員は都市部の豪華なホテルに宿泊。ニューヨークの本部に戻って報告を受けた上司は「泥には鉄分もあるから良いんじゃないか」とうそぶいたという。
◆NYタイムズ紙「組織揺るがす大胆候補」
「例えば、国連は難民問題の解決に40億ドル(約4300億円)が不足すると試算するが、飛行機のファーストクラスも使う国連機関全体の年間旅費は23億ドルもある。本当に必要な投資がされていない」。2月、国連総会議長に立候補表明の書簡を送った。
ポルトガル首相などを歴任したグテレス氏ら従来の候補のような政治・外交経験や知名度、大国の後ろ盾はない。だが、ネット上での主張が徐々に広がり、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が「組織を揺るがす大胆な立候補」と大きく報じるなど、米中対立などで硬直化する国連のあり方に一石を投じる存在になりつつある。
◆「傍観者になるつもりはない」
「異例の立候補だというのは分かっている。でも、傍観者になるつもりはない。私は国連を信じている」と話すアカンクシャ氏。「性別や人種、国籍にこだわらず、反戦を目指す新しい世代。国連はジェンダー平等をうたうが、これまで女性の事務総長はいなかった」として、新しい国連は世界中にインターネットを広め、途上国などの人材育成を後押しすべきだと訴える。
立候補について、グテレス氏の報道官は記者会見で「他の候補についてコメントはしない」と話している。
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