戦後・浅草に生活共同体「アリの街」 マリアの怜子さんが絵本に 「女子パウロ会」が出版

2021年3月3日 06時37分

アリの街の子どもたちと北原怜子さん=アリの街実行委員会提供

 浅草(台東区)の隅田川西岸に戦後の一時期存在した生活共同体「アリの街」に奉仕し、「アリの街のマリア」と呼ばれた北原怜子(さとこ)さん(一九二九〜五八年)を主人公とした絵本「アリの町のクリスマス」が出版された。発行元はカトリックの聖パウロ女子修道会が運営する出版社「女子パウロ会」(港区)で、文章は同会の複数のメンバーが協力して作成した。 (井上幸一)
 東京の恵まれた家庭に生まれた怜子さんは、ポーランド人のゼノ修道士と浅草で出会い、アリの街の子どもたちの勉強や生活の世話を始めた。結核を患い、二十八歳で死去するが、立ち退きを求められていた街の存続のために尽力し、最期まで祈り続けた。その姿は一九五八年に「蟻(あり)の街のマリア」(松竹)として映画化され、演劇にもなっている。
 女子パウロ会では、編集の担当者が、アリの街に関する展示会を訪れたことなどを機に絵本作りに着手。街に怜子さんがやってきた初期のころに焦点を当て、クリスマスに向けて子どもたちに賛美歌を教えたエピソードなどを、狩野ふきこさんの優しいタッチの絵で紹介している。

「アリの町のクリスマス」の表紙

 巻末には、怜子さんを姉のように慕い、アリの街で六年間一緒に過ごした女性の思い出話も掲載。「えくぼと八重歯があってとてもかわいい人で、少し低めの声」などと、怜子さんの具体像にも触れている。
 担当者は「怜子さんのことに加えて、神様が人々をを愛し、大事にされたクリスマスの意義についても知ってほしい」と期待する。女子パウロ会の怜子さんに関する書籍は、伝記「アリの街のマリア 北原怜子の生涯」(二〇一四年、酒井友身さん著)もあり、「絵本を読んで、伝記も読んでもらえたらうれしい」としている。
 絵本は、千二百円(税別)。問い合わせは、女子パウロ会=電03(3479)3943=へ。
<アリの街> 隅田川に架かる言問橋の北側の公園に、戦災で家族や家を失った人たちが1950年に形成した集落。廃品回収を生業に、アリのように勤勉に働き生活していた。公園を管理する都から立ち退きを求められ、60年に江東区の埋め立て地に移転、88年に解散した。地元台東区の住民らが「アリの街実行委員会」を結成、街の記憶を後世に残す活動をしている。

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