熱いぞ、農系ポッドキャスト 農家の始め方 しゃべります@さいたま市

2021年3月3日 07時25分

ビニールハウス内でポッドキャストの収録をする「こばと農園」の田島友里子さん=さいたま市緑区で

 ラジオと農作業は相性がいいが、最近は「聞き手」から「しゃべり手」になる若手農家が増えている。スマートフォンなどで無料で聴ける音声配信メディア「ポッドキャスト」に「農系」と呼ばれる農業に関する番組が続々と登場。あのアップル社も注目するムーブメントになっている。学術系からエンタメ系までバラエティーに富む「農系」の魅力とは−。
 「『女ひとり。新規就農radio』始まります。このポッドキャストは、どうやって私が新規就農したかをお伝えする番組です」
 スマホにつけたマイクに語りかける「キャスター」は、さいたま市緑区にある「こばと農園」のオーナー田島友里子さん(34)。「スタジオ」はビニールハウスの中。
 美術教諭から転身し、四年前に有機農園を開いた田島さん。農家での修業時代、育苗や草取り、収穫など単純作業中に常時かかっていたラジオに親しんだ。同じ音声メディアのポッドキャストも、スマホとワイヤレスイヤホンがあればトラクターの運転中でも楽しめ、農作業のお供に最適。好みの番組を探すうち、農家が発信する番組「ノウカノタネ」の大ファンになった。
 「自分も発信できるかなと、ほかの農系ポッドキャスターに聞いたら『大歓迎』と言ってくれて」。昨年十二月から週一、二回のペースで配信を始め、これまでの総再生回数はおよそ一万回。就農の初期費用や年収を赤裸々に語った回は特に反響が大きかった。

ポッドキャストを聴きながら農作業をする田島さん

 農業番組の草分けは、福岡市南区で野菜や果樹を育てる「つるちゃん」こと鶴田祐一郎さん(34)が、農家仲間の「コッティ」や「てつ兄」と二〇一四年に始めた「ノウカノタネ」。これまでに約二百七十エピソードを配信。法律や補助金、農薬など専門用語も柔らかな博多弁で包み、農家以外のリスナーも多い。
 「農系」の名付け親も鶴田さん。「農“業”系だと仕事の話だけになってしまう」。今では海外の論文や最新ニュースを伝える「農学系」、農業をネタにした「エンタメ系」、農政や農家の旧弊に物申す「毒舌系」、農には全く触れずラップやヒップホップを披露する「無関係系」など多彩なジャンルがそろう。
 和歌山県の果樹農家「こうへい」さんが送る「よるののうか」はエンタメ系。「作業用手袋は右手だけなくなりがち」「肥料屋さんはクセが強い」など、農家が聴けば膝を打つ(らしい)「農家あるある」コーナーが人気という。
 「ノウカノタネ」は五日に発表されるポッドキャストの賞「JAPAN PODCAST AWARDS2020」で、プロのメディアと並び二年連続で大賞にノミネートされている。ぐんぐん伸びる「農系」。仲間たちも毎月一日を「農系ポッドキャストの日」と決め、一斉配信や番組同士のコラボなどで農業の魅力発信に力を入れている。

◆農系の名付け親 「ノウカノタネ」つるちゃんに聞く

 「ノウカノタネ」の鶴田祐一郎さんに聞いた。
 −なぜポッドキャストを始めた。
 日本の農業はラジオ文化で、おじいちゃんおばあちゃんもラジオを鳴らしながら野良仕事をする。聴取者層の1位はドライバーで2位は農家と聞く。全国の広い畑で黙々と聴く人が全部つながったら面白い。ポッドキャストを日本で流行(はや)らせたいのもあった。
 −種苗法改正では農家の声を聞きたいという要望に応えた。行政や学識経験者と違う立場のコメントにニーズがある。
 学者の先生はもっとマクロな視点で見るのが仕事。素人がやっているポッドキャストだからこそ聴けるのでは。これが建築関連の法改正なら大工さんが話したりするだろう。新しい価値が一つ提供できるかなとは思う。
 −農家がつながった上でやりたいことは。
 ポッドキャスターには、農業を憧れの職業ナンバーワンに、と打ち出す人もいる。僕も同意で、つながった皆がおいしい作物を作ろうという気持ちになれたらすごくいい。そうなれば(農家が)輝いて見えるかな。
 ◇
 番組の顔ともいえるアートワークも、農系のバリエーションの広さを象徴するように個性的!
 文・前田朋子/写真・隈崎稔樹
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