ロシア大使館員の脱出劇

2021年3月3日 08時05分
 平壌にある外国の大使館は、特別な地域に集められている。監視するためのようだが、ロシアと中国の大使館だけは、市内中心部に位置する。長い友好関係が反映している。
 在平壌大使館に勤務していたロシア人に話を聞いたことがある。故金正日(キムジョンイル)総書記は、旧ソ連(ロシア)で生まれたとされ、簡単なロシア語ができた。ロシアの大使館員と時々ポーカーをし、意見交換をしていた。
 大使館の地下にはインターネット部屋があり、館員は一人十五分ずつアクセスできた。地下室には立派なドアがあった。トンネルを通じて北朝鮮の官邸につながっていた。故金日成(キムイルソン)主席が、外部に知られないようロシア大使館を訪ねるためのものだった。ただ、トンネルはすでに埋められていた−。
 そんな特別扱いされている平壌のロシア大使館員と家族の計八人が帰国した。その様子がネット上に投稿され、驚きが広がった。
 旅行カバンを載せた大型のトロッコを線路の上で押しながら、北朝鮮との国境を越え、ロシアに戻ったからだ。一行は列車で三十二時間、さらにバスで二時間移動した後、ようやく国境までたどり着いたという。
 トロッコを使ったのは、新型コロナウイルス対策で交通機関が止まり、国境が封鎖されているからだ。特別待遇の外交官さえ、こんな方法で帰国せざるを得ないなら、一般人の生活は相当厳しいに違いない。 (五味洋治)

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