<身元保証を考える おひとりさま社会のなかで> (下)地域で支える 脱「代行」 進む指針作り

2021年3月4日 07時18分

成年後見や身元保証の相談に乗る山中さん=愛知県小牧市で

 全ての高齢者が安心して自立した生活を送れるように−。契約トラブルも多い身元保証代行業者からの脱却に向け、身寄りのない高齢者らを地域で支える新たな動きが芽生えてきた。
 「一人暮らしで認知症の人がいる。どうすればいいか」。愛知県小牧市の尾張北部権利擁護支援センターには、民生委員や地域包括支援センターの職員らから、こうした相談が頻繁に寄せられる。
 センター長の社会福祉士、山中和彦さん(63)は成年後見制度の手続きを説明することが多い。入院や施設入所の話になると、身元保証が絡んでくるので「代行サービス以外の形を考えて」とくぎを刺すのが常だ。
 身元保証サービスは監督官庁がなく、業者によって内容や質はばらばら。特に認知症の人の場合、内容がよく分からないまま契約し、財産が侵害される恐れもある。山中さんがそう説明しても、「代行業をずっと使ってきたので困る」と言われることもあるという。
 同センターは小牧、岩倉、大口、扶桑の四市町が二〇一八年七月に共同で設置。専任の社会福祉士三人が電話や窓口で話を聞き、解決策を協議する。後見人のいる高齢者の入所施設からは「病院に付き添う人がいない」と相談があり、民間のヘルパーを紹介した。
 尾張北部地域の中核病院である江南厚生病院(同県江南市)は、身元保証のない人の入院などに対応するガイドライン作りを進めている。地域の十病院で足並みをそろえ、六月からの取り組み開始を目指す。
 例えば、入院生活に必要な身の回りの備品や消耗品を準備する場合、職員が患者からお金を預かり買いに行くと負担がかかるが▽衣類レンタルや洗濯の業者と病院が契約し、後払いにする▽移動式の売店を導入する−といった形に統一すれば改善できる。
 患者が費用を支払わない場合は、第三者が年金を管理し、本人のために使えるように成年後見制度を利用。死亡時の遺体引き取りは行政と事前に協議して葬儀業者を決め、休日夜間でも対応できるようにする。
 手術、延命治療などの際の「医療同意」には、人生の最終段階まで患者の意思決定を支援する「アドバンス・ケア・プランニング」(ACP)が大事だ。本人の判断能力が低下する前に話し合って希望を確認しておけば、医療チームが判断できることは多いという。
 同病院医療ソーシャルワーカーの野田智子さん(53)は「病院や自治体ごとに対応が違うと退院や死亡時にトラブルになり、それを避けるための代行任せが変わらない」と指摘。行政や医師会とも協議してガイドラインを作り、福祉施設にも代行任せからの脱却を働き掛けていく方針だ。
 東京都足立区では、社会福祉協議会が独自の有償サービスを展開している。身寄りがない高齢者を対象に年二千四百円の会費で、月に一回の電話、半年に一度の訪問を実施。入院・入所時の立ち会い、自宅の電気・水道の休止手続きなどの「あんしんサービス」(一回千円)、通帳などの預かりサービス(一カ月千円)、判断能力が低下した場合の入院・入所費用支払いのための預託金(五十二万円)なども行っている。
 おひとりさま社会の中、地域の状況に応じた支援の仕組み作りが進む。「高齢者が不安に思うことを細分化し、代行任せでなく、地域で一つ一つ解消していく姿勢が大事」。山中さんは力を込める。
 (この連載は、安藤明夫、佐橋大、四方さつきが担当しました)

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