<社説>思いやり予算 日米安保検証の機会に

2021年3月4日 07時26分
 在日米軍の駐留経費を、日本側はどこまで負担すべきか。米側の政権交代は、日米安全保障体制の在り方を検証する好機だ。漫然と負担を続けるのではなく、負担の意味や適正な額を問い直したい。
 日米安保条約に基づく日米地位協定は、駐留米軍に基地や訓練場などの施設・区域を提供する義務を日本側に課す一方、駐留に要する経費は米側負担と定めている。
 思いやり予算は米側が負担すべき人件費や光熱水費などを日本側が代わって負担するもので円高や米国の財政赤字などを背景に一九七八年度から始まった。根拠を問われた当時の金丸信防衛庁長官が「思いやりをもって対処する」と答えたことにちなむ。
 二〇一六年度から五年間の総額は九千四百六十五億円。支出の根拠となる特別協定は今月末に期限が切れるが、米側でバイデン政権への交代があったため協定を暫定的に一年間延長し、交渉を続けることで日米両政府が合意した。
 二一年度は二〇年度予算と同水準の二千十七億円になるという。
 しかし、安保条約上、日本側に義務のない負担である。負担を要する差し迫った事情があるのか、やむを得ず負担するにしても、どの程度が適正水準なのか。国会での徹底した審議抜きで安易に認めていいはずはない。
 トランプ前政権は、現行の四倍に当たる年間八十億ドル(約八千五百億円)への増額を求めた、という。法外な要求である。
 日本の負担は米軍施設借料や基地交付金などを加えれば総額年間八千億円近くに達する。防衛省の試算によると、日本側の負担割合は一五年度段階で八割を超え、韓国やドイツなど他の米軍駐留国に比べても突出して高い。
 バイデン政権には、日本の施設利用のメリットと日本側負担の重さを丁寧に説明する必要がある。
 アジア・太平洋地域の警察力として米軍の存在は認めるとしても軍事的台頭が著しい中国との対立先鋭化を避け、いかに平穏な地域秩序を築くのか、日米の構想力が問われる局面だ。
 F35戦闘機など高額な米国製兵器の大量購入や、沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設をこのまま続けていいのかも、検討を要する喫緊の課題である。税負担する日本国民や、基地負担を強いられる地域住民の理解なくして、安保体制は円滑に運営できまい。
 菅義偉内閣は、駐留経費負担を含む安保体制全般の検証を、バイデン大統領に提起すべきである。

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