<社説>英BBCを禁止 中国の不当な報復だ

2021年3月4日 07時26分
 中国が英BBC放送の国内での放送を禁じた。英国による中国国営テレビの海外放送免許取り消しへの対抗措置だという。その実態は、香港問題で関係が悪化した英国への不当な報復ではないか。
 中国当局は二月、BBC国際放送の国内での放送を許可しないと発表。その理由についてBBCの中国報道が「真実、公正でなく、中国の国家利益に損害を与え、中国の民族団結を破壊した」と明らかにした。
 BBCは二月初旬中国の新疆ウイグル自治区にある、ウイグル族の監視や統制を目的とした「再教育施設」で、組織的な性的暴行や拷問を受けたとする女性らの証言を放送した。
 中国政府は記者会見などで「偽情報と偏見に満ちた報道だ」などと、繰り返しBBCの放送を非難してきた。少数民族の分離独立運動に神経をとがらせる中国は、この報道を最も問題視して放送禁止に踏み切ったのだろう。
 英国のラーブ外相が「中国の決定はメディアの自由を奪うもので容認できない」との声明を出し、中国を批判したのは当然である。
 中国は、二月初めに英国が中国国営テレビの海外放送免許を取り消したことへの対抗措置発動を示唆していたが、英中両国の放送禁止は次元の違う問題である。
 英国は、中国の国営放送が共産党の管理下にあり自由な編集権がないことを問題視して免許を取り消した。BBCは国際社会が看過することのできない中国国内の人権侵害であるとして、ウイグル族虐待の実態を告発した。
 その報道内容が自国に不都合だからといって、中国がBBCの放送を禁じるのは、不当な報道抑圧である。中国憲法に明記される「言論の自由」が、共産党支配に抵触しない範囲でしか認められないことを露呈させたともいえる。
 さらに、中国の強硬な対英姿勢には、近年の香港民主化運動をめぐり、旧宗主国の英国に対する不満が横たわっているように映る。
 中国は昨年、香港統制を強める国家安全維持法を成立させた。英国のジョンソン首相は、香港の高度な自治を認めた英中共同宣言の「明白で深刻な違反」と批判し、両国関係は悪化した。
 中国は五日に開幕する全国人民代表大会(国会)で、「愛国者による香港統治」を実現する選挙制度改革を審議する。香港の自治が失われ、ますます中国化していくことは、英国だけでなく国際社会の望む道ではない。

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