<あの日から 東日本大震災10年>原発損賠訴訟の控訴審判決 障害児抱える母 非認めぬ国・東電に怒り

2021年3月4日 08時04分
 東京電力福島第一原発事故に伴う群馬県などへの避難者が、国と東電に損害賠償を求めた集団訴訟の控訴審判決で、東京高裁は一月下旬、両者の賠償責任を認めた一審の前橋地裁判決を覆し、国については責任を認めない判断をした。十一日で事故から十年。障害児の娘を抱えながら自主避難し、原告に加わっている四十代のシングルマザーが本紙の取材に応じ「この十年間は裁判をして判決を待つ日々だったので、長く感じている」と実感を込めた。 (菅原洋)
 「国の責任がどうして、ひっくり返ったのか。国が非を認めないことに怒りを感じる」。母親は憤る。
 「東電も、母子を自主避難者として線引きし、会社として謝罪せずに裁判で闘うのはおかしい」。母親の東電に対する思いは一段と厳しい。
 母子の賠償額は、一審判決では母が数十万円で、娘は「ゼロ」。控訴審判決では、娘は数十万円になったが、母は半額近くに減額された。「これまでの苦労を思えば、それに見合った金額ではない。納得できない」。母親は訴える。
 原発事故当時、避難指示などの区域外にある福島県沿岸部に住んでいた母親は「娘は障害のために放射能の影響が大きいのでは」との不安が募った。
 このため、母子は二〇一二年一月、身寄りのない群馬県へ避難し、現在は民間の賃貸住宅で暮らす。
 母親はパートの職を得たが、月収は十万円程度。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、転職は難しい。児童手当などは月に計約四万円。これに対し、家賃は月に約五万円で、生活費などが加わればギリギリの家計状況だ。福島県が自主避難者に続けてきた住宅の補助は数年前、打ち切られた。
 訴訟は東電も上告するため、母子は弁護士と相談して上告した。ただ、母親は「裁判はこんなに時間がかかるけれど、大して結果は得られないと思う。やらなくても良かった」と悔やんでいる。
 原告弁護団は判決全体について「一審よりも賠償が手厚くなった部分はあるが、まだ不十分な部分は多く、特に(避難指示などの)区域外避難者については被害の実態に全く見合っていない」と指摘。「国の責任に関しては、原発の安全性に対する意識が完全に欠落している」とみている。
 原発事故に関する高裁判決は福島県と、千葉県の避難者らの集団訴訟はそれぞれ国の責任を認めている。

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