「久々の食事」に感激!コロナ貧困の学生に救いの手 フランス官民一体の支援

2021年3月4日 12時00分
 【パリ=谷悠己】新型コロナウイルスの感染拡大により大学や高等教育機関の休校が長引くフランスで、学生の貧困や心理的負担が深刻化している。一人暮らしの学生が国内外から集まるパリでは、アルバイトを失って経済苦に陥り食費を削る若者が増えており、官民がそろって食料支援に乗り出している。

2月下旬、パリの学生街カルチェ・ラタンでボランティア団体「Linkee」が学生向けに行った食材詰め合わせバッグの無料配布会

◆行列のできるパリ市内の配布所

 「こんなにしっかりした食事を取るのは久しぶり」
 2月下旬の夕方、パリの学生街カルチェ・ラタンに近いセーヌ河畔でボランティア団体「アゴラエ」が開設した食料配布所。こう言って喜びながら夕食のセットを受け取ったソルボンヌ大2年のモナさん(21)は、仏政府の夜間外出禁止令が始まる午後6時より前に帰れるよう家路を急いだ。
 この日のメニューは野菜がたっぷり入ったソースをかけたアフリカ北部の郷土料理クスクスに、パンと新鮮な果物。休業中のレストランのシェフが調理し、事前登録した先着50人の学生に無料で配っている。
 配布所の責任者エレオノールさん(26)は「昨秋まではよく来る学生が決まっていたけど、最近は初めて見る顔が増えた。より多くの学生が困っている証拠だと思う」と話す。パリ市内ではこうした食料配布所が複数設けられており、配布数が多い会場では学生たちが作る列が屋外にまで及ぶ光景が定例化しつつある。
 アゴラエの配布所を訪れたモナさんは学生寮暮らし。家庭教師のアルバイトで生計を立てていたが、コロナ禍のために来訪を断る家庭が増えて、収入が激減。両親の仕送りにも頼ることができず、貯金を半分以上、取り崩したという。

◆経済的にも精神的にも…

 フランスの大学や高等教育機関グランゼコールは、昨春の都市封鎖(ロックダウン)時から遠隔授業が続いている。自宅での学習に難しさを感じているというモナさんは「この間のテストも散々だった。うつ気味になることもあるけど、『つらいのは私1人じゃない』と言い聞かせている」と話す。
 学生の生活を観察する仏国立機関(OVE)が昨年9月に公表したアンケートでは、20代の学生の約2割が経済的に苦しんでいることが分かり、全年代の学生の6割以上が「憂鬱ゆううつやいら立ちを感じる機会が増えた」と回答した。

◆大統領が支援約束

 こうした声の高まりを意識したマクロン大統領は1月下旬、パリ近郊の大学で開いた学生との意見交換会で、民間ボランティア団体が先行していた食料支援を政府も本格化すると約束。政府系の学生食堂で昼食と夕食を1ユーロ(約129円)ずつで提供するサービスを始め、孤立化対策として週1回の登校日の開設と精神科系の校医80人の追加雇用を発表した。

学生向けの10ユーロクーポンの創設を伝えるスーパー大手アンテルマルシェの新聞全面広告(右)と、「バトンを受け継ぎます」として同じ企画を始めることを表明したオーシャンの全面広告(左)

 政府の対応に触発された民間企業も、2月から支援を加速させている。
 大手スーパーのアンテルマルシェが学生向けの10ユーロクーポン券を創設すると、ライバル企業オーシャンも「ありがとうアンテルマルシェ。バトンを受け継ぎます」との全面広告を新聞各紙に掲載した後、同じサービスを追従。別のスーパー大手カジノは学生向けにすべての自社製品を1割引きにすることを発表するなど、支援策を競っている。

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