<新かぶき彩時記>「御所五郎蔵」の台詞 吉原の風俗 織り込まれ

2021年3月5日 07時44分
 言葉の応酬が面白い三角関係。それが「御所五郎蔵(ごしょのごろぞう)」です。元武士の五郎蔵は、旧主・浅間家の元同輩・星影土右衛門と因縁の間柄。五郎蔵の恋人、腰元皐月(さつき)に横恋慕していた土右衛門とともに御家(おいえ)を追放となります。生活に困った五郎蔵を支えるため、傾城(けいせい)になった皐月に土右衛門はなおも執心しています。
 五条坂甲屋の場は、子分らを引き連れた二人が吉原で七年ぶりに出会う華やかな場面。五郎蔵は侠客(きょうかく)に、土右衛門は浪人となっています。一触即発の両者ですが、注目は両花道に居並ぶ面々が台詞(せりふ)をリレー式につないでいく「渡り台詞」。浅草・待乳山(まつちやま)の景色を織り込んだ五郎蔵の台詞に続いて「貸編笠(かしあみがさ)の焼き印も」「丸くは行かぬ男伊達(おとこだて)」「角(かど)だつ心も色酒に 和らぐ廓(さと)の春景色」「梅も桜に植え替えて まさる眺めの仲の町」とリズミカル。遊客が顔を隠すために貸し出された編笠や、春に桜を移植する吉原の風俗も巧みに配され、作者・河竹黙阿弥(もくあみ)の工夫が光ります。
 興味深いのが五郎蔵の「曽我兄弟が討ち入りに似た喧嘩(けんか)から名を売って、あだ名に呼ばれる御所の五郎蔵」の台詞。これは「助六」など多くの歌舞伎作品のネタ元である曽我五郎の仇討(あだう)ち伝説と、五郎を抱きとめたという人物・御所五郎丸から発想されたものでしょう。 (イラストレーター・辻和子)

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