<社説>IS再興の兆し 封じ込めへ国際協調を

2021年3月5日 08時14分
 過激派「イスラム国」(IS)がコロナ禍に乗じ、息を吹き返した。国際協調による封じ込めが必要だ。過激派が伸長する紛争地の解消に向け、米バイデン政権には軸となる役割を演じてほしい。
 ISが再び暴れ始めた。イラク西部やシリア北東部では政府軍などへの攻撃が激化し、北大西洋条約機構(NATO)の国防相理事会は先月、イラク駐留部隊の増員を決めた。バグダッドでは一月、三年ぶりの自爆テロで市民ら三十二人が死亡。エジプトのシナイ半島やパキスタンでも、昨年暮れからテロを繰り返している。
 活性化はアフリカでも目立つ。ナイジェリアでは昨年暮れ、IS系の過激派「ボコ・ハラム」が寄宿学校を襲い、生徒三百四十四人を拉致。その後、解放されたが、身代金狙いの模倣犯も絶えない。ニジェールでは一月、二つの村の住民百人以上が虐殺された。
 ISは二〇一四年にイラク・モスルで独自の宗教国家樹立を宣言し、隣国シリアに越境した。異教徒の虐殺などで世界を震え上がらせ、シリアではロシアやイランなどがIS抑止のために介入。一九年には米軍が指導者のバグダディ容疑者を暗殺し、一時は壊滅的な状況に追い込まれていた。
 だが、コロナ禍がその再興を促した。各国の治安部隊が集団行動を制約され、取り締まりが手薄になったためだ。さらにISは以前からSNS(会員制交流サイト)を勧誘の手段にしているが「巣ごもり」生活で感化される若者が増えていることも一因とされる。
 宗教的な過激派集団の存在は現代の病理といえる。独裁体制や排外主義などがこの種の集団を培養する。貧困対策なども決定打にはならず、根絶に特効薬はない。
 むろん放置はできない。彼らの影響力を減殺する多様な対策が必要だ。国境概念のない集団だけに多国間の協調が不可欠になる。
 特に米バイデン政権への期待は大きい。従来、米国のIS対策は十分とは言い難かった。トランプ前政権は指導者こそ殺害したが、ISの主張に根拠を与えかねないイスラエルに偏った中東政策を展開した。その前のオバマ政権はシリアのアサド政権をけん制するため、同政権にとって脅威であるISを半ば放置した。
 ISは紛争地で勢力を広げる。その抑止には、まず紛争という土壌の解消が必要だ。バイデン政権にはパレスチナ和平の再建のみならず、各地の紛争解決に向けた協調外交への尽力を期待したい。 

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