菅氏「自らの決断」アピールしたいだけ? 期間も解除基準もあいまいのままの緊急事態宣言延長

2021年3月6日 06時00分
 東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏1都3県を対象とした新型コロナウイルス緊急事態宣言の再延長が5日、正式に決まった。菅義偉首相はコロナ対応への「後手」批判を意識し、自らの決断を前面に押し出した。だが「1カ月後に必ず改善させる」と断言した発令時から、既に2カ月。解除の基準や、なぜ2週間延長なのかの明確な説明がないまま、国民はさらなる我慢を強いられる。 (上野実輝彦)

◆知事らに先んじたくて

 首相は5日夜の記者会見で「総合的に考慮し、首相として延長を判断した」と強調した。
 背景には、1月の宣言発令や観光支援事業「Go To トラベル」の停止時期などのコロナ対応で遅れを指摘された経緯がある。
 1月の宣言は新規感染者数が急増し、小池百合子都知事ら1都3県の知事から要請を受けた後で発令。当初は首都圏のみを対象としたが、1週間もたたないうちに関西や中京圏にも拡大せざるを得ず、首相の見通しは甘いと批判を浴びた。
 今回も、先に再延長への動きを見せたのは知事側。首相は解除を検討しながら、政府のコロナ対策分科会など専門家の議論を待たず、先手を打つ形で3日に再延長を表明した。小池氏らが政府に要請する前の決断を意識したのは明らかで、自民党幹部は「また振り回されていると思われたくないからだ」と指摘する。

◆「2週間」はどこから?

 政治決断の色彩が強まったことで、解除の基準はあいまいになった。
 1月の発令の際、西村康稔経済再生担当相は解除の目安として、分科会が示す「ステージ3相当」に下がったかを見極めると説明。数字の上ではクリアしながら、結論は再延長。首相は主な理由に「病床の逼迫」を挙げたが、加藤勝信官房長官は「逼迫の定義はない」と認める。
 首相は解除へ「一定以上に余裕のある数値まで落としたい」と強調。政府高官は「1月時点とは異なる。感染者数が減ってもリバウンドなど新たな課題が出てきた」と説明するが、自民党の閣僚経験者は「基準がめちゃくちゃ。どうなれば解除なのか決めないと」と注文する。
 2週間の根拠も不明確だ。西村氏は「データ分析によれば2週間で(病床使用率の改善が)可能になる」と話すが、政権内でも「もう1カ月と言われても国民がついてこられないから」(首相周辺)、「25日に始まる東京五輪の聖火リレーの前に期限を設定した」(自民党幹部)と見解が割れる。官邸幹部は「期間に合理的な理由はない」と明かした。

◆具体的対策は…

 宣言の期限が延びたからといって、状況が改善する保証もない。分科会の尾身茂会長は新規感染者数の減少が下げ止まっている可能性に言及しているが、対策の柱は「(飲食店の)時短営業やテレワーク、人の流れを減らすことを徹底したい」(西村氏)と従来方針の維持にとどまっている。
 3月は、新生活に伴う人の移動や花見、歓送迎会などの行事が盛んになる。昨年は下旬の連休で人出が増え、感染が急拡大した。専門家や与党内からは「延長しても、何か対策を打たない限り状況は変わらない」(ベテラン議員)と懸念の声が出ており、首相は会見で検査拡大や若者への発信強化を訴えたが、効果は未知数だ。

関連キーワード

PR情報