<あの日から 東日本大震災10年>被災者112人の「ありがとう」 9年前上演のミュージカル 11日、動画サイトで公開

2021年3月6日 07時23分

被災地への支援に感謝を伝えるミュージカルを演じる被災者ら=祖父江さん提供

 東日本大震災の一年後、銀座で被災者百人以上が出演したミュージカル「とびだす100通りのありがとう」の映像が、震災から十年を迎える十一日、動画配信サイト「YouTube」で公開される。これまで一度きりしか公演されておらず、脚本を手がけた作曲家寺本建雄さん(74)は「支援してくれた人にありがとうと伝えたいという思いでできた作品。世界中の人に感謝を伝えたい」と話している。 (西川正志)
 ミュージカルは二〇一二年三月十八日に上演。二千人以上の来場者が詰めかけ、出演した被災者百十二人は津波の恐怖など被災体験を語るとともに、オリジナルの歌を歌い上げた。
 制作は、宮城県東松島市から小平市の寺本さん宅に避難していたバンド仲間の男性が「多くの支援にお礼を言いたい被災者は多いはず」と話したことがきっかけで、寺本さんが「ミュージカルで全世界にありがとうを発信しよう」と提案した。寺本さんらは出演する被災者を募り、聞き取ったエピソードをもとに脚本を書き上げた。

被災者が出演するミュージカル「とびだす100通りのありがとう」を作った作曲家の寺本建雄さん(右)とプロデューサーの祖父江真奈さん=荒川区で

 公演後、全国から上演依頼があったが、再び百人以上の出演者を集めることは不可能で実現しなかった。寺本さんの妻でプロデューサーの祖父江真奈さん(70)は「出演者を減らしてアレンジした作品は公演したが、オリジナルは一度しか演じていない」と話す。映像を収録したDVDも上映会で使用するだけで販売しておらず、限られた人しか観賞していない。
 震災から十年を迎えるにあたり、寺本さんは改めて被災者らの十年間の思いを込めた新作の構想を練っていた。だが、新型コロナの影響で断念。祖父江さんは「ミュージカルは集団が密室で大声を出す。コロナ禍の中、最もやってはいけないこと」と話す。
 そこで、二人は一度きりの公演の映像を公開することを思いついた。「震災当時、世界中から届いた支援に改めて感謝を伝える機会だ」と寺本さんは前向きに捉える。そして、「被災者にとっては十年で何かが変わるわけじゃない。十二年目、十三年目の新作だっていい」と、いつか新たな作品に挑戦するつもりだ。
 公開は十一日午後二時四十五分〜三十一日まで。公開に先立ち、宮城県出身で寺本さんらの活動を応援する声優の山寺宏一さんや、当時の出演者らのインタビュー映像を七日から順次、配信する。

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