<食卓ものがたり>山と共存、命いただく 鹿肉(愛知県豊田市)

2021年3月6日 07時20分

鹿肉料理を中心としたランチプレートを説明する清水潤子さん=愛知県豊田市で

 愛知県豊田市の中心部から、車で四十分ほどの山あいの一角。幹線道路から少しそれた場所に、古民家を改装した建物がポツンと立っていた。
 シカを中心に有害鳥獣として駆除した動物の肉を使ったジビエ料理を出す「山里カフェMui(むい)」だ。周囲に広がる田んぼは、野生動物の侵入を防ぐ柵で囲われている。三年前に店をオープンさせた清水潤子さん(49)は「山里の現状を知ってほしくて、この場所を選んだ」と話す。
 鹿肉をマイタケなどとバターで炒めたランチメニューの一品は適度なかみ応えがあり、うま味を感じた。よくいわれる臭みは全くない。肉は、市内などの山林で清水さんが駆除し、隣接する処理施設で解体、調理したものだ。店名の「Mui」は「自然のままに」という意味の「無為」から取った。
 清水さんが有害鳥獣の駆除に関わるようになったきっかけは八年前。カフェを開いた地域の田んぼであった米作り体験に参加した時のことだ。突然、走り出たイノシシを見て、地元の人が漏らした。「田んぼを荒らすイノシシを撃ってくれる人がいたらいいのに」
 野生動物に農作物が荒らされ、それが耕作放棄につながっていた。駆除するハンターが高齢化しているとも聞いた。同市によると、昨年の有害鳥獣による農作物被害は約一億円。シカによる被害は、カラス、イノシシに次ぎ三番目に多い。
 一年後に狩猟免許を取って猟に出るようになったが、駆除した動物の大半がその場で埋められたり、焼却処分されたりしていた。全国で駆除した個体を食肉利用している割合は約一割にすぎない。その値を少しでも引き上げようと奮闘する。「山の恵みをいただきながら、人と自然が共存するには、どうしたらいいかを考えてもらえれば」
 文・写真 佐橋大

◆買う

 山里カフェMuiは不定休。営業時間は午前11時〜午後4時だが、ランチは予約制で午後2時まで。ホームページ(店名で検索)を見て電話かメールで予約する。ランチのジビエプレートは1300円。月ごとに内容が変わる。
 通信販売もしており、鹿もも肉100グラムを324円で買うことができる。ホームページでは清水さんが考案した「鹿肉のハンバーグ」や、名古屋学芸大管理栄養学部の学生たちが考えた「鹿チリビーンズ」=写真=など、さまざまな鹿肉料理のレシピを紹介。初めての人も調理するのに困らない。

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