<いばらき震災10年>安全と味 こだわり奮闘 つくばのきのこ園・飯泉孝司さん

2021年3月6日 07時56分

明るいハウスの中でシイタケ栽培に精を出す飯泉孝司さん=つくば市で

 東京電力福島第一原発事故による放射能汚染で、県内でも農林水産物が大きな被害を受けた。特にシイタケは放射性物質のセシウムを吸着しやすく、影響はいまだに続いている。つくば市で原木シイタケ栽培に取り組む「なかのきのこ園」の飯泉孝司さん(72)は、品質で勝負する一方、山林の再生にも力を入れる。 (出来田敬司)
 原木シイタケは、コナラやクヌギのほだ木に菌を打ち込んでつくる。菌床を使って育てる方法より、時間はかかるが、香りが立つ質の高いキノコが育つとされる。園の最近の年間の出荷量は約百八十トン。原発事故後、放射能汚染されたほだ木を大量に廃棄したこともあり、いまだにピーク時には及ばない。
 事故からしばらくの間は除染するため、ほだ木の表面を洗浄する作業を続けた。ただ、数年たつと放射性物質がほだ木の辺材に入り込んで除去が難しくなり、使えなくなった。
 さらに二〇一二年四月、国が食品に含まれる放射性物質の基準値を一キロ当たり五〇〇ベクレルから一〇〇ベクレルへと強化。園のシイタケはほとんどが一〇〇ベクレル未満だったが、「途端に売れなくなった」(飯泉さん)。納入先からは事前の連絡もなく、翌日から納めないでほしいとの連絡もあった。小売店の中には、国よりさらに厳しい自主基準を設けているところも多かった。
 園は、ほだ木の仕入れ先を従来の福島から長野や埼玉、大分などに切り替えることで対応した。さらに放射性物質の基準値だけでなく、味や品質にこだわる納入先を確保することで危機を乗り越えた。
 ただ、原木シイタケはいまだに出荷制限や自粛がかけられている自治体もある。県によると、露地と施設を合わせ制限や自粛を受けているのは水戸市など十九市町に上る。
 原発事故で放出された放射性セシウムの134と137のうち、量が半分になるまでの半減期は、134が約二年なのに対して137は約三十年。事故から十年たっていることから、飯泉さんは「問題なのは137だ」と指摘する。
 飯泉さんは現在、山林を再生させる運動に汗を流している。一三年にNPOを設立し、つくば市や福島県南相馬市の山林で下草を刈り取り、クヌギを植えている。汚染の心配がない安心して使える木材を確保するためだ。
 「植林は今後数十年にわたる大掛かりな作業になる。きれいな山林でほだ木を育み、子供たちが自由に散策できるような環境をつくっていければ」と希望を抱く。

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