福島の農家 苦悩なお 被災語ったドキュメンタリー「大地を受け継ぐ」再上映

2021年3月6日 08時08分

樽川さん(写真奥)の体験を聞く若者たち=(c)「大地を受け継ぐ」製作運動体

 東京電力福島第一原発事故で被災した農家の苦悩を描くドキュメンタリー映画「大地を受け継ぐ」(二〇一五年制作)が震災十年に合わせ、横浜や都内で再上映される。監督の井上淳一さん(55)は「事故から十年を経た今も、変わっていない現実を考えてほしい」と訴えた。
 一五年五月、福島県須賀川市で代々農家を営む樽川(たるかわ)和也さんが、東京から訪ねて来た若者たちに被災体験を語る姿を撮影した作品。
 事故から約二週間後の一一年三月二十四日、樽川さんはキャベツ畑近くの木に首をつって自殺している父親=当時(64)=を見つけた。放射能汚染を受け、キャベツの出荷停止連絡があった翌朝だった。
 田畑を荒れさせないため、樽川さんは汚染された農地で、ほとんど売り物にならない作物を作り続けた。家族を奪われ、生産者の誇りを日々傷つけられている樽川さんの訥々(とつとつ)とした語りを、若者たちは涙ぐみながら聞いていた。

井上淳一監督

 再上映にあたり、井上さんは追加取材も考えたというが「何も手を加えないでそのまま見てもらおう」と判断。「地震があるたびに原発の心配をしている現状も、農家の苦悩も変わらない。コロナ禍でさらに置き去りにされているが、事故は過去のことではないことを考えてほしい」と話した。
 六〜十二日午前十時から横浜シネマリン=電045(341)3180、十三〜十九日午後六時からポレポレ東中野=電03(3371)0088=で上映。 (中山洋子)

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