中国経済「自立自強」の方針も課題は尽きず 批判無視の香港、ウイグル問題がリスクに

2021年3月7日 06時00分

5日、北京の人民大会堂で行われた、中国全人代の開幕式で拍手する習近平国家主席と李克強首相=共同

 中国の習近平政権が中国経済の先行きに対して強気と弱気の両面をのぞかせている。5日開幕の全国人民代表大会(全人代=国会に相当)では、新型コロナウイルスの抑制などを自賛する一方、国内消費の活性化や外国に頼らない技術力の獲得など課題は尽きない。米中対立の長期化を背景に「自立自強」のスローガンを掲げる習政権の勝算は―。(北京・坪井千隼)

◆科学技術、ハイテク部品を「国産化」

 「科学技術の自立自強を国家発展戦略の柱とする」。李克強首相は5日の政府活動報告で、重要技術やハイテク部品の「国産化」を図る方針を示した。
 この日公表された第14次5カ年計画(2021~25年)では、官民あわせた研究開発費を年平均7%以上増やすと明記。人工知能(AI)や量子情報、半導体など7分野を重点に、研究開発費における基礎研究の比率を全体の8%以上に引き上げる方針も示した。李氏は「十年一剣を磨く(長年鍛錬を積み重ねる)精神で、(技術開発の)核心領域で重大な突破を実現する」と訴えた。
 念頭には、米国が昨年に半導体などの輸出規制を本格化させ、ハイテク産業が痛手をこうむった苦い経験がある。政府活動報告でも「サプライチェーン(供給網)を自律的にコントロールできる能力を増強する」と盛り込んだ。
 しかし国外との技術格差は依然として大きい。中国政府は20年までに半導体の自給率を40%に高める目標だったが、米調査会社によると同年で15・9%にとどまる。中国経済に詳しい東京財団政策研究所の柯隆主席研究員は「経済成長の大前提は供給網の維持だが、半導体などハイテク部品をすべて自給するのは不可能だ」と分析する。

◆内需主導型の「新たな発展を構築」

 経済政策のもう一つの柱は、外需に依存しない内需主導型の「双循環(2つの循環)」だ。李氏は「強大な国内市場を形成し、新たな発展の形を構築する」と強調。具体策として、流通網の整備や農村部でのネットを通じた取引拡大、休日の拡充などを挙げたが、いずれも決め手に欠ける。
 また李氏は「(中国は)経済のプラス成長を実現した唯一の主要経済国」と強調しつつも、「経済回復の基盤はまだ固まっていない」として、地方政府の抱える巨額の負債や技術開発力の不足などが課題と率直に認め、5カ年計画の成長率目標は設定しなかった。
 庶民の関心が高い民生の改善では、職業技能訓練などの雇用対策、年金など社会保障の拡充などで目配り。経済成長の足かせとなる少子高齢化には、保育サービスの拡充や養育困難家庭への補助制度などを対策として5カ年計画に盛り込んだ。

◆供給網維持に国際社会との協調不可欠

 中国共産党は7月に創建100年を迎える。22年秋の党大会以降も政権を率いるとみられる習氏は、5カ年計画で、社会全体での「習近平思想」の学習を明記するなど長期政権に向けて着々と布石を打つ。
 しかし、国際社会の批判を無視して香港の選挙制度を見直すなど習政権の強権的な政治姿勢は、経済にとってもリスクとなりかねない。柯氏は「供給網維持には国際社会との協調が不可欠だが、現実には香港やウイグル問題で孤立化を深めている」と指摘する。

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