インフラ重視の復興行政、被災地にひずみ 進む過疎・高齢化 政府「7原則」の現在地

2021年3月7日 06時00分
 東日本大震災の被災地では、政府の復興構想会議が2011年6月の提言に盛り込んだ「7つの原則」に基づき、復興事業が進められてきた。単なる復旧ではなく、被災地をよりよく再生する「創造的復興」を目指し、災害に強いまちづくりや、地域主体の生活再建などを掲げた。だがこの10年間、インフラの整備に重点が置かれた結果、過疎化や高齢化が進むといったひずみも生じている。(中根政人)
 7つの原則では、津波対策を徹底するとして「災害に強い安全・安心のまちの建設を進める」と明記。集落の高台・内陸への移転、土地のかさ上げ、防潮堤整備などの防災事業が推奨された。政府復興予算の11~19年度執行見込み額約37兆円(復興債の償還費などを含む)のうち「住宅再建・復興まちづくり」事業は34.8%と最も高い割合を占めた。
 津波で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市は、市中心部などで約299ヘクタールの土地区画整理事業を実施し、商業地などを大規模にかさ上げした。同市だけで阪神大震災後の事業面積全体を超える規模だ。
 だが、かさ上げした土地の利用率(利用予定を含む)は昨年12月現在で39.2%にとどまり、市街地には空き地が目立つ。
 大型公共事業は完成までに時間がかかる。待ち切れなかった被災者は地域外に流出。結果的に被災地の復興の遅れや過疎化・高齢化を助長した面は否めない。復興庁の報告書では、高齢化率は岩手、福島両県で3割超。15年の国勢調査によると、岩手県大槌町や宮城県南三陸、女川両町などでは人口が震災前より約2割~4割減った。
 平沢勝栄復興相は、報道各社のインタビューで「(被災者の)最初のニーズに合わせて事業をやると、時間がたって気持ちが変わってしまうことがあった」と総括した。
 東京電力福島第一原発事故については、7つの原則で「被災地への支援と復興にはより一層のきめ細かな配慮を尽くす」と記載。だが、政府は帰還困難区域の全面的な避難指示解除の時期を示さないまま。復興のスタートラインにすら立てない地域が残る。
 宮城県気仙沼市の菅原茂市長は2月の会見で「(被災した)地方をどうするかという議論がないまま、創造的復興という言葉が人それぞれに都合よく使われている」と復興の現状に不満をもらした。

 復興構想会議 旧民主党政権で、東日本大震災からの復興に向けた基本政策を検討するために設けられた菅直人首相(当時)の諮問機関。五百旗頭(いおきべ)真議長のほか、岩手、宮城、福島3県の知事や有識者委員の計15人と、特別顧問で哲学者の梅原猛氏で構成。2011年4月14日に初会合を開催。4回目の会合で策定した「復興構想7原則」をベースに提言内容を検討。6月25日の12回目の会合で提言を決定した。

関連キーワード

PR情報

政治の新着

記事一覧