「津波が来ても安全な創造的復興」「ひとくくりにせず複線型復興」 震災10年、被災地はどう進むべき?

2021年3月7日 06時00分
 東日本大震災からの復興を巡り、津波被害の防止を理由とした大規模なインフラ事業などで課題が指摘されている。震災当時に政府の復興構想会議議長として提言を取りまとめた五百旗頭真・兵庫県立大理事長と、日本学術会議の分科会で復興事業の改善を提言した吉原直樹・横浜国立大教授に話を聞いた。(聞き手・中根政人)

インタビューに答える兵庫県立大の五百旗頭真理事長

◆緊急事態に対応する専門家が必要

 兵庫県立大の五百旗頭真理事長
―復興構想会議の提言では、集落の移転や土地のかさ上げ、防潮堤整備などの重要性を掲げた。
 「三陸などの沿岸部は、過去の津波被害で決定的な対処ができずにいた。東日本大震災では(津波で)危ない所を全部上げた(移転した)。津波が来ても安全なまちにするのが、創造的復興の目玉だった。もういっぺん、津波でやられる所に住みなさいというのは非人道的だ」
 ―整備に時間がかかり、結果的に復興の遅れや過疎化、高齢化を加速させたとの批判もある。
 「復興が手厚くできたのは素晴らしいことだ。増税の財源もあり(事業費を)大盤振る舞いできる状況ではあった。初期段階から地方の財政負担を一定程度入れて(国との)共同責任にした方がよかったのではないか」
 ―震災の教訓を今後、どう生かすべきか。
 「(災害対策や復興に関して)統合する機関がない。内閣府防災担当に専門家はいない。緊急事態に対応する専門家のグループ(省庁)が必要だ。めったに来ない災害のために新しい(政府)機関をつくるのかというが、そうではない。災害は大きくなり、頻発している」

 いおきべ・まこと 1943年、兵庫県生まれ。神戸大教授、防衛大学校長などを経て、兵庫県立大理事長、ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長。専攻は日本政治外交史。政府の復興構想会議議長、復興推進委員会の委員長を歴任。

東北地域の復興について話す横浜国立大の吉原直樹教授

◆復興には地域的なバリエーション

 横浜国立大の吉原直樹教授
 ―日本学術会議の分科会提言で「巨大すぎる公共事業は、地域住民の力に基づいた復興に結びつかず、復興の遅延を生み出す」などと指摘してきた。
 「これまで岩手、宮城、福島の3県では、ある意味で『単線型』の復興をやってきた。だが、復興には地域的なバリエーションがある。被災者をひとくくりにはできない。人々が日常的に悩み、苦しむところから追求すべきような復興とともに『複線型』の復興を考えていくべきだった」
 ―津波から住民を守るまちづくりに時間がかかった地域もあった。
 「例えば漁業者は(集落の)移転で(沿岸の)生業と切り離された。高い防潮堤も建設され、生業とつながった(地域の)風景が奪われてしまった。そういう点は、100年や200年、300年というスパンで考えた場合には、果たしてどうなのか」
 ―震災の教訓を今後、どう生かすべきか。
 「政府か国会に、震災復興の過程を検証する委員会を設置し、(今後の災害復興に備えた)新しい知見を出していくことが非常に大事だ。その意味では、アーカイブ(重要な記録の保存・活用)が重要になる」

 よしはら・なおき 1948年、徳島県生まれ。東北大教授、大妻女子大教授などを経て、横浜国立大大学院都市イノベーション研究院教授。専攻は社会学。日本学術会議で東日本大震災に関する分科会の委員長を務める。

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