日本のジェンダー平等、なぜ進まない? 秋月弘子・国連女性差別撤廃委員会委員に聞く

2021年3月7日 18時51分

「法や制度をつくる国会の男女格差が一番の問題だ」と指摘する国連女性差別撤廃委員で亜細亜大の秋月弘子教授(© UNIC Tokyo/Kiyoshi Chiba)

 
 日本でジェンダー平等の実現は、なぜ進まないのか。国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)委員で亜細亜大の秋月弘子教授に聞いた。

◆女性活躍の取り組み足りない日本

 ―日本の現状をどう見ているか。
 「世界経済フォーラム(WEF)が初めてジェンダーギャップ指数を公表した2006年、フランスは70位で日本は79位とそこまでの差が無かった。ところが19年、フランスは15位に上がり日本は121位まで下がった。日本は女性活躍推進など取り組んで来たが、全然足りない。いかに他の国が本気でやっているかということだ」

◆政治分野の男女格差が一番の問題

 ―政府は、第5次男女共同参画基本計画で、指導的地位に占める女性の割合を「20年までに少なくとも30%程度に」とする目標から「20年代の可能な限り早期に」と先送りした。
 「政治分野の男女格差が一番の問題だ。列国議会同盟(IPU)によると、すでに途上国を含め130カ国以上の国がクオータ制を導入し、女性議員を3割以上に増やそうとしている。日本は衆院で1割にも満たず、『政治分野における男女共同参画推進法』に罰則はない。クオータ制の導入など、暫定的な特別措置をとるべきだ」
 「社会を変えるには、法や制度をつくる国会を変えなければならない。カナダは国会(下院)に女性の地位委員会を設け、すべての法や政策、予算が差別的でないかを確認している。差別がある世界に法を平等に適用しても、社会は変わらない。現状を変えられる法や政策をつくらなければ意味がない」

◆旧姓の通称使用で離婚の危機

 ―第5次基本計画は自民党内の反対派に配慮し「選択的夫婦別氏(別姓)」の文言を削除した。CEDAWは民法の夫婦同姓規定を差別的と勧告してきた。
 「日本を審査予定の委員は、計画の後退を懸念している。本当に平等なのであれば、96%の女性が男性の姓に変えるはずがなく、委員は家父長的な家制度が残っていると読み取った。16年の審査では、根深いジェンダー差別を助長する社会規範や文化的伝統を変えるよう指摘した」
 ―政府が進める旧姓の通称使用では、解決できない課題も少なくない。
 「私自身、旧姓の秋月でCEDAWの委員に立候補し当選後、国連では戸籍名しか使えないことが発覚した。家族で話し合って離婚を決意したが、世界の女性のために仕事をしようという思いと裏腹に、日本の法律で離婚しなければならない現実に悔しさを覚えた。幸い、外務省が掛け合い、CEDAWの会議に旧姓での出席が認められ、離婚は避けられたが、男性には想定できないだろう」

◆ジェンダー平等実現まで特別措置の理解必要

 ―女性差別撤廃条約は、不平等を是正するための優遇措置を認めている。
 「平等が達成されるまで、暫定的に女性に有利な特別措置を取ることは差別ではないと規定している。人権問題は国連の目的を規定している国連憲章第一条に盛り込まれ、国際問題化した。日本のことは日本で判断するという感覚は、世界から10周遅れと言っても過言ではない」
 「一方で、優遇措置を逆差別と感じる人もおり、世界で反発や揺り戻しが起きている。ジェンダー平等を実現するまでと、理解と協力を求める必要もある」

あきづき・ひろこ 1959年、福岡県生まれ。国際基督教大(ICU)大学院修了。外資系金融機関や国連開発計画(UNDP)勤務を経て、99年から亜細亜大助教授、2002年より現職。19年から4年間の任期でCEDAW委員を務める。

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