最高裁判事15人のうち女性は2人だけ 司法の場にもジェンダー平等を 元最高裁判事の桜井龍子さん

2021年3月8日 06時00分
インタビューに答える元最高裁判事の桜井龍子さん=東京都千代田区の日本カメラ財団で

インタビューに答える元最高裁判事の桜井龍子さん=東京都千代田区の日本カメラ財団で

 日本でジェンダー平等が進まない要因の一つとして、司法の場での女性割合の低さが指摘されている。「憲法の番人」とされる最高裁判所の判事15人のうち、女性は現在、2人だけだ。これまでは女性3人が過去最多だった。最高裁では、性差別が絡む訴訟や、選択的夫婦別姓といった家族のあり方を問う訴訟も扱う。元最高裁判事の桜井龍子さん(74)は、最高裁判事の割合は男女同じであることを理想とし、当面は30%にあたる5人を目指すべきだと語る。(砂本紅年)

◆判断基準の違い

 桜井さんが最高裁判事になった2008年当時、女性判事は桜井さん1人だけ。その後、3人の時期が約4年あった。妊娠後に降格など不利益な扱いをするマタニティーハラスメント(マタハラ)を巡る訴訟を担当した際は、高裁の判決を見直し、女性の訴えに沿う判断を示したこともある。「女性の雇用環境にプラスになるような判決を出せた」
 桜井さんは「性差によって判決の判断が変わるとは思わないが、性差別に根ざした事案では、判断基準の違いが出ると感じたことがある」と振り返る。
 その一つが、15年の夫婦別姓訴訟の最高裁大法廷判決だ。夫婦が同じ姓を名乗ると定めた民法750条の規定について、大法廷は判事15人のうち、10人の多数意見で「合憲」と判断した。桜井さんら女性判事3人は全員「違憲」でまとまり、男性判事2人も「違憲」だったが、他の10人の男性判事を納得させられなかったという。桜井さんは岡部喜代子判事に同調する形で「別姓を全く認めないことに合理性は認められない」などとする意見をつけた。

◆女性判事を増やす必要性

 桜井さん自身も姓の問題に直面した。30代後半で結婚した後に通称として使ってきた旧姓が、最高裁判事就任時当時には認められず、仕方なく戸籍名の「桜井」で天皇の認証を受けた。「旧姓で仕事の実績を継続できない不利益を経験した」。結婚時に改姓するのは96%が女性というのが、日本の現状だ。
 最高裁の女性判事は1994年に初めて任命された。その後は0~1人の時期が続いた。政府が掲げてきた、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%とする目標も達成できていない。
 桜井さんは最高裁で女性判事を増やす必要性を強調する。「今の社会で女性が直面しやすい、困難や経験を基にした意見を出すことができる」と考えるからだ。
 「人口構成と同様、男女半々が理想だが、当面は30%が現実的な目標ではないか。15人の判事のうち、5人は女性であるべきだ。最高裁も問題意識はあると思うが、裁判官からの内部登用による女性判事がいまだに実現していないのが一番残念だ。諸外国のように、公的部門が率先して女性登用を進めてほしい」

さくらい・りゅうこ 1970年、旧労働省入省。婦人福祉課長時代、育児休業法の制定に携わる。勤労者福祉部長、官房審議官などを経て、98年女性局長。2001年退官後、九州大、大阪大大学院などで客員教授などを歴任。08年から17年まで最高裁判事を務めた。

◆市民団体が女性判事4人任命要望 最高裁などに

 女性差別の解消を目指して活動している市民団体「女性差別撤廃条約実現アクション」は、最高裁判所で今年退官予定の判事の後任に女性を任命することを求める要望書を、最高裁など関係機関に提出する準備を進めている。
 今年は女性1人を含む5人の最高裁判事が定年退官。2月に退官した男性判事の後任には既に男性が就任しており、今後、退官予定の男性3人と女性1人の後任に、女性を任命するよう求める。約90の女性団体などが賛同。共同代表の柚木康子さんは「ジェンダー不平等の日本を変えていくためには、司法のトップから変革が必要だ」と話している。要望書は8日以降に提出する予定だ。

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