コロナ禍で噴出した社会のひずみが女性たちを追い詰める…女性の人権を考え、行動を 神奈川の3人に聞く

2021年3月8日 06時48分

<今、変化を 国際女性デー>

 コロナ禍は、女性を取り巻く環境の厳しさを浮き彫りにした。賃金格差や不平等な育児など、噴出した社会のひずみが女性たちを追い詰めている。この現状を、どうすれば変えることができるのか。女性の人権を考え、行動する8日の「国際女性デー」に合わせ、神奈川県内の3人に聞いた。

◆元川崎市議・小田理恵子さん 既定路線 変えていこう 

「女性はマイノリティーの最大派閥。女性が議会に入れなければ、他のマイノリティーはもっと入れない」と話す小田さん=横須賀市で

 二〇一一年から川崎市議を二期務めた小田理恵子さん(49)=横須賀市=は、それまで勤めていた民間企業と議員生活の違いに戸惑ったという。あまりに世間の常識とは異なる議会の実態をマンガに描き、単行本「ここが変だよ地方議員」にもまとめている。
 森喜朗元首相の女性蔑視発言を「もっとひどい話はいっぱいあった」と苦笑いする。川崎市議会(定数六〇)の当時の女性議員は一期目が十四人、二期目は十一人。現在も十五人で三割にも満たない。
 小田さんが見聞きしただけでも、同じ意見の議員が他にいるのに女性議員だけ罵倒され発言を撤回させられたり、一般質問に立たせてもらえなかったり。「女性はスケープゴートにしやすいのかなと感じた」
 同僚によるセクハラ発言や、街頭演説での待ち伏せや少しでも対応が悪いと怒鳴られるなど、有権者からのセクハラも女性議員からたくさん聞いた。「根っこに、女性を意のままにできるという差別がある」。女性議員が増えない原因の一つと指摘する。
 議員として、従来の議会が後回しにしてきた課題に取り組んだ。女性都議と共同で自治体によって待機児童の数え方が異なる実態を調べ、一五年、地方自治体の首長や議会、市民による政策立案・実現の事例を表彰する「マニフェスト大賞」で優秀政策提言賞に選ばれた。理由の一つは、異なる自治体の議員の連携だった。「利害関係や組織の壁を越えることの是非は考えなかった。課題を軸に一緒にやろう、と」。フラットな関係を結びやすい女性ならではだったと振り返る。

「空気を読めない」と言われても屈しない女性議員の状況を描いた漫画=(c)小田理恵子

 選挙区外の女性からの相談も多かったという。「私が女性で、当時は最年少。同じ属性だから話しやすかったのでは」。保育園が見つからず悩む母親らと一緒に、新設の保育所で空きの出る高年齢児枠を活用して、待機児童を減らす制度を実現したこともあった。
 上からの指示に従いがちな男性議員に対し、女性議員は前例にとらわれず、自分の価値観と照らして「それは違う」と主張する傾向があると実感している。「既定路線を変えていく力が女性にはある。会派に一人や二人ではダメ。もっと女性議員が増えれば議会も変わる」 (石原真樹)

◆たじま家庭支援センター長・江良泰成さん 母子の貧困 深刻化

困窮家庭に粉ミルクなども配る江良さん=川崎市川崎区で

 京浜工業地帯周辺で困窮家庭を支援する「たじま家庭支援センター」(川崎市川崎区)の江良泰成(えらやすなり)センター長(60)は「コロナが新たにもたらした貧困の深刻さを感じている」と話す。
 コロナ禍で自粛された地域の子ども食堂に代わり、生活困窮家庭に直接食べ物を届ける「フードパントリー」を昨年三月に開始。地域の約七十軒に、企業などから寄付を受けた米やレトルト食品などを配布している。「今の支援先の九割は、子ども食堂の利用者と重ならない」という。
 センターの支援先の多くは、立場の弱い女性たちだ。ひとり親世帯や、子育て施設の利用申請書類が書けない外国籍の女性たち。コロナの影響で失業した夫から暴力を受けて幼子を置いて姿を消した母親もいた。
 「粉ミルクやおむつなど必要なベビー用品も買えず困っている母親が地域にいる。シングルマザーの場合、自転車で通える範囲でパートを掛け持ちし、それでも低賃金で生活が成り立たないことも多い。無理がたたり、体調を崩す人もいる」。食べ物の訪問配布は、困窮家庭を見つけ、必要な機関につなげるきっかけにもなるという。
 「誰にも相談できず、地域で孤立しているケースが心配。支援が届かないしわよせは、子どもにくる」と危機感を募らせる。 (安藤恭子)

◆横国大教授・一柳優子さん 壁のない社会に

「誰もが普通に生きられるよう、邪魔をしない社会になってほしい」と願う一柳教授=横浜市保土ケ谷区で

 横浜国立大(横浜市保土ケ谷区)で二〇一九年、初めて工学系の女性教授になった一柳(いちやなぎ)優子さんは、目の前に立ちはだかる壁に何度もぶつかってきた。「誰もが普通に生きられるよう、邪魔をしない社会になってほしい」と願う。
 同大の助手だった〇〇年、科学研究費補助金を国に申請する際、旧姓で申請すると事務方から「戸籍名で申請するように」と言われた。客観的な評価を積み上げたかった一柳さんは「戸籍名に変わってしまうと、研究が追跡できなくなる。実績が無かったことになってしまう」と反論したが、前例が無いことを理由に戸籍名での申請を強いられた。
 夫婦別姓の必要を訴え続け、翌年からは旧姓での申請が認められた。現在は給与明細などでも旧姓使用が可能になっている。「前例を作り、未来を開くのが私の仕事だと思うところがあった」と振り返る。
 同大では理工学部の学生の約一割が女性。女性が数人しかいなかったころを思えば、雰囲気は変わってきたと実感する。それでも、理工系分野の女性研究者は極端に少ない。
 「日本では、男性がとても優遇されてきたことにみんなが気付くことが、誰もが普通に生きられる社会につながるのではないでしょうか」
(丸山耀平)

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