自由な働き方のはずが… 業務委託「危うさ」同居 労基法など対象外 最低賃金 保障なく

2021年3月8日 07時04分
 近年、働き方が多様化する中で注目が集まる業務委託。会社側と雇用契約を結ぶことなく、対等な立場で仕事の依頼を受ける働き方だ。得意分野に絞って仕事ができる、時間が自由になる−などメリットは少なくない。一方で、労働基準法などの対象からは外れるため、専門家は「雇用保険など働き手を守る仕組みが不十分」と警鐘を鳴らす。 (佐橋大)
 得意の英語を生かし、楽器大手「ヤマハ」の子会社が運営する大阪府内の教室で、講師を務める清水ひとみさん。長年、会社側と業務委託契約の更新を繰り返しながら英語を教えてきた。
 この働き方のデメリットを実感したのは三年前。フルタイム並みに働いているにもかかわらず、会社員や公務員向けの厚生年金に加入できないことについて、同僚が大阪労働局に問い合わせた時のことだ。「業務委託の形で働いている講師は個人事業主であり、雇用された労働者ではないため」と理由を説明された。
 会社と雇用契約を結んだ労働者は、労働基準法や最低賃金法が適用されるが、個人事業主は対象外だ。労働保険に入れず、仕事を失っても失業給付を受けられない、仕事でけがをしても原則、労災が認められない、賃金や労働時間の規制もかからない−などさまざまな保護を受けられないことを、あらためて実感した。
 個人事業主は、働き方に裁量があるのが本来の姿だ。しかし、清水さんたちの場合、教材や教え方は会社が決めており、自由にならない。会議や研修会への出席も強制されている。このため、清水さんらは、直接雇用への移行を求めて会社と交渉を続けている。
 国が「多様な働き方」の実現を掲げる中、健康機器メーカー「タニタ」(東京)は二〇一七年、社員の希望者を個人事業主化。業務委託契約を結んで一人一人のやる気を引き出すことによって、会社の競争力を高めようとするといった動きもある。
 一方で清水さんたちのように、契約上は業務委託であるものの、実態は特定の企業の指揮下で働く「名ばかり個人事業主」もいる。運送業の運転手や配達員、建築作業員などで多くみられるが、厚生労働省にも詳しい統計はない。
 労働問題に詳しい弁護士の松丸正さん(74)=大阪府=によると、日本は欧米に比べ、どこまでを法律上の労働者と判断するかという解釈の幅が狭い傾向にあるという。ただ、直接雇用されていなくても、訴訟を起こせば、会社からの命令を断る自由があるかないかといった実態をもとに、認められる可能性はゼロではない。その意味では、清水さんのケースもあてはまるとみられる。

◆70歳就労で選択肢の一つ 「保護外し」弁護士ら反対

 希望する人が70歳まで働けるよう、企業に努力義務を課す改正高年齢者雇用安定法が、4月に施行される。希望者に対し、企業が導入に努めなければならない働き方の選択肢の一つが、業務委託だ。
 これについて、労働問題が専門の弁護士らで構成する日本労働弁護団は昨年2月、「高年齢者を労基法などの保護から外すもので、働く者の権利を著しく侵害することになる。断じて容認できない」という声明を発表した。高齢者は転倒などのリスクが高いにもかかわらず、業務委託では労災が認められないことが理由だ。弁護団は「救済の途を閉ざすこととなり、有害である」と指摘している。

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