女子バレーのスター選手がいじめで代表剝奪に 韓国スポーツ界に蔓延する暴力、パワハラ

2021年3月8日 20時00分

学生時代のいじめが発覚した、韓国女子バレーボール代表の李在英選手(左)と李多英選手=1月、韓国・仁川で(聯合・共同)

 暴力やパワハラなど、問題が相次ぐ韓国スポーツ界で、今度は女子バレーボールのスター選手による過去のいじめが、明らかになった。東京五輪での活躍も期待されたが、協会は代表資格を剝奪。他の選手も告発されるなど、波紋を広げている。(ソウル・中村彰宏)

◆「ナイフで脅された」後輩が告発

 いじめが発覚したのは、双子の李在英イジェヨン選手(24)と李多英イダヨン選手(24)。高校時代から韓国代表に選ばれ、東京五輪の出場権獲得にも貢献した。母親も元代表選手。多くのテレビ番組やCMにも出演している。
 先月、小・中学生時代にバレー部の後輩だったという4人の告発が発端となった。「命令を断ると、ナイフで脅された」「金を取られ、頭を殴られた」「臭いから隣に来るな、と言われた」など21項目に及ぶいじめ被害をインターネット上に列挙。韓国メディアによると、多英選手がネットに「いじめる方は楽しくても、いじめられた方は死にたい」と人ごとのように書き込んでいたことから、4人は告発を決意したという。
 両選手はいじめを認め、「自分のせいで被害を受け、つらい記憶を残したことを謝罪します」(在英選手)、「被害者の方が許してくれるなら、直接会って謝罪します」(多英選手)とつづった自筆の謝罪文を出したが、別の被害者が名乗り出るなど批判が続出した。

◆根深い暴力、学校でも

 韓国プロリーグの所属チームは両選手を無期限出場停止にし、韓国バレーボール協会は代表の選抜対象から無期限除外すると発表。45年ぶりのメダルを狙う東京五輪出場は難しくなったが、協会は「再発防止に向け、厳しい対応が必要と判断した」としている。
 男子バレーのプロ選手もいじめの告発を受け、引退を表明するなど影響は拡大。韓国では、昨年もトライアスロン選手が監督らの暴力を苦に自殺するなど問題が後を絶たない。学校スポーツでの暴力も根深く、国家人権委員会が2019年に行った調査では、小、中、高校のスポーツ選手のうち14・7%が指導者や先輩らから暴力を受けたと回答した。
 今回の問題を受け、文在寅ムンジェイン大統領は「スポーツの体罰、セクハラなど問題が根絶されるよう特段の努力を傾けてほしい」と述べ、改めて対応を指示。文化体育観光省は、暴力の加害経験がある選手の代表入りを制限し、プロや実業団、大学に入る際も校内暴力の有無を確認するなどの対策を発表した。

◆背景に「殴れば成績が上がる」という考え

 韓国スポーツ界で暴力やパワハラ問題が相次ぐ背景や対策を、スポーツ倫理センターの金賢淑キムヒョンスクスポーツ人権振興室長に聞いた。

スポーツ倫理センターの金賢淑スポーツ人権新興室長=本人提供

 ―センターの概要は。
 スポーツ選手の人権を守るための独立機関が必要との声が高まり、昨年8月に発足した。以前は事件が発生すると各競技団体が調査していたが、センターでは相談を受けて直接調査し、団体への処分要請や警察への捜査依頼も行う。これまでに380件ほどの被害の相談や申告を受けた。
 ―暴力が起こる原因は。
 合宿所など指導者と選手たちだけが集まっている状況が非常に多い。外部の目がなく、閉鎖的な空間で暴力が多く発生する。もう1つはエリート主義。五輪のメダルに関心が集中し、その分の成績を出さなければならないため、メダルが有望な種目で、暴力が多く発生する。「殴れば成績が上がる」という考えがあり、周囲も成績のために容認する文化がある。
 ―対策は。
 徹底した調査をし、公正に処分をする。これまでは選手が弱い立場だった。事実関係に合った処分をしなければならない。長期的には、選手や指導者、選手の親らを対象に予防教育を実施する。指導者に対しては暴力、性暴力に関する再教育を義務付け、教育を受けないと資格が取り消される。

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