台風19号浸水被害「川崎市は過ち認めて」 賠償求め、きょう集団提訴 

2021年3月9日 07時21分

原告団長の川崎晶子さん=いずれも中原区で

 二〇一九年十月の台風19号に伴う川崎市内の浸水被害を巡り、中原、高津両区の住民らが九日、市に損害賠償を求めて横浜地裁川崎支部に提訴する。増水した多摩川の泥水が下水道管を逆流し、住宅地で浸水被害が拡大したのは、市が逆流防止の水門を閉めなかったためだと主張。原告団長の私立学校教諭、川崎晶子さん(47)は「再発防止のためにも、まず市は過ちを認めて」と訴える。 (石川修巳)
 弁護団によると、原告団には七十一人(個人六十七、法人四)が参加する(二日現在)。町別では、中原区が上丸子山王町三十三人、下沼部十五人、宮内十二人、新丸子東二人、高津区が下野毛三人、諏訪五人、北見方一人。
 請求額は、一人百万円の慰謝料を含めて総額二億五千万円前後になる見通し。今後も被災した住民らに参加を呼びかけ、第二次訴訟も想定しているという。
 弁護団の川岸卓哉弁護士は「市の責任を明らかにしてほしいと願って訴訟に参加し、賠償請求は『慰謝料だけでいい』という原告も多い」と語る。
 市の資料によると、住宅地に降った雨水などを多摩川に流す「排水樋管(ひかん)」と呼ばれる水門周辺では、市内五カ所で浸水被害が発生。浸水面積は約百十ヘクタールに上ったとされる。
 市は昨年四月にまとめた検証報告書で、水門操作の判断に関して「操作手順どおり行われていた」と説明。福田紀彦市長も今月三日の記者会見で「市が想定しうる以上に多摩川の水位が上がり、被害が発生した。私たちに瑕疵(かし)はない」と語り、提訴されれば争う姿勢を示した。

◆「なぜ水害に…それが知りたい」原告団長・川崎晶子さん

床上浸水した1階の台所(川崎晶子さん提供)

 二〇一八年秋に家族五人で入居した多摩川近くの三階建ては、わずか一年後に「半壊」になった。川から逆流した泥水で床上浸水し、リフォーム代や家財などの損害は約千八百万円にも。家の中を靴のまま歩くのは悲しかった。
 当初は川が増水し、土手を越えてしまったのだろうと思っていた。ところが数日後、市が排水樋管(ひかん)のゲートを閉めていなかったようだ、と耳にした。「私たちはなぜ水害に遭わなければならなかったのか。それが知りたくて」
 副市長をトップに、委員は市職員だけの検証委員会を傍聴した。「まるで『自分たちの対応は問題なかった』という結論ありきの会議みたいだった」。ゲート操作は手順通りだった、想定以上の水位になった−。そうした説明に納得できず、「また浸水が繰り返されるんじゃないか」と危機感を抱いたという。
 街を歩き、住民たちにも話を聞いた。裁判どころではないという被災者も、もうここでは暮らせないと街を去った人もいた。「裁判でいろんな人たちの声が形になるといい。仕方なかった、では済まされない」
 偶然にも水害直前の夏休み、当時小学六年だった三男が、水害にたびたび苦しんできた地域の歴史を調べた。古老も訪ね、「水害へ団結した人々」と題して模造紙四枚にまとめた。自宅近くの水門「山王排水樋管」が設置されたのは、住民たちが団結し、要望した成果だったと知った。
 「いい街だね、って息子と話したばかりだった。だから、今度は自分たちの番かな。できないよ、とは子どもたちに言えませんし」 (石川修巳)

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