<あの日から 東日本大震災10年>村救った「奇跡の水門」 岩手・普代村、河津町に絵本 寄贈

2021年3月10日 07時19分

岩手県普代村から河津町に寄贈された絵本=同町役場で

 河津桜を通じて交流のある岩手県普代村から河津町に、東日本大震災から10年の節目に合わせて制作された津波伝承絵本「普代村を守った奇跡の水門」が寄贈された。村の担当者は「静岡の人たちも南海トラフ巨大地震の恐れがあるので、ぜひ読んでほしい」と願っている。 (山中正義)

津波被害を最小限に抑えた普代水門=岩手県普代村提供

 普代村は岩手県沿岸北部にある人口約二千六百人の小さな村。二〇一一年の震災で津波が襲ったが、高さ一五・五メートルで「東北一」ともいわれる普代水門が被害を最小限に抑え、死者は一人も出なかった。
 この「奇跡の水門」誕生の経緯や役割、過去の教訓の大切さを後世に伝えるのが、河津町に寄贈された絵本だ。地域活性化で村と連携する追手門学院大(大阪府茨木市)の学生が作った紙芝居を基に共同制作し、二月に発行した。
 絵本などによると、水門は明治、昭和に二度の津波で多くの犠牲者が出た教訓から、当時の和村幸得村長(故人)が建設に尽力。多大な建設費がかかるため村民の反対もあったが、和村村長はあきらめず、絵本では「今は水門を作ることを分かってくれる人はいない。でも、いつか分かってくれる人があらわれるはずだ。一番大事なのは、ひとの『いのち』だ」と自分に言い聞かせるように語る場面などが描かれている。

【震災時】震災で津波に襲われた海岸沿いの様子

 水門は一九八四年に完成。三度目の津波となった東日本大震災では人の命だけでなく、村の美しい景色などを守る役割を果たした。
 絵本はA4判の全四十ページで五百部を発行し、岩手県内の全小学校に配った。A5判も二千部を印刷した。
 河津町は震災後、河津桜の苗木を贈るなどして村と交流している縁から、三冊ずつ計六冊の寄贈を受け、今月八日に町役場に届いた。町企画調整課の担当者は「子どもたちに震災のことを知ってもらうとともに、防災意識を高めてもらいたい」。役場や町内の図書館に展示し、四月以降は貸し出しも計画している。
 震災からまもなく十年を迎え、震災を知らない子どもも増えている。村総務課政策推進室の森田安彦室長は「過去の教訓を生かすため子どもたちに絵本で種をまく。過去を忘れることで前に進めることもあるけど、やっぱり忘れないで未来を変えたい」と話す。

【震災後】震災から復興した海岸沿いの様子=いずれも同村提供

 絵本は、村へのふるさと納税の返礼品になっている他、動画投稿サイト「ユーチューブ」で読み聞かせの映像を視聴することもできる。

関連キーワード

PR情報

静岡の新着

記事一覧