謎のロシアコロナ死者数 本当は5倍?政府内にも3つの説

2021年3月10日 12時00分
 ロシアの新型コロナウイルスの死者数が昨年、従来発表の5倍超に達していた可能性が指摘されている。政府機関や閣僚は、深刻な被害をうかがわせる数値を新たに公表しており、死者数を巡って政府内で3つの説が併存する状況だ。死者数は世界2位で、米国に肉薄する勢いだったとする報道もある。 (モスクワ・小柳悠志)

モスクワで昨年5月、新型コロナウイルス関連の死者を埋葬する当局職員=いずれもモスクワ通信社

 これまで「公式」とされてきたのは政府のコロナ対策本部が出す数値で、昨年のコロナ関連の死者は約5万6000人。一方、連邦統計局は2月、死者は約16万2000人だったと公表した。対策本部の速報値に対し、統計局は確定的な死因診断書を基に集計することなどから死者数が異なったとみられる。
 保健担当の副首相も昨年暮れ、「超過死亡の81%以上がコロナか、その後遺症が原因」と明かした。昨年は2019年と比べて32万3000人の超過死亡が出ており、昨年のコロナ関連の死者は26万1000人以上に達する計算になる。
 一方、独立系メディア「メドゥーザ」は、モスクワ保健当局が昨年12月の市内の超過死者の98%をコロナが原因だったとしたことを根拠に、全土で昨年中の超過死亡に当てはめるとコロナの死者数は30万人規模になると主張した。
 米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、昨年の米国のコロナ死者数は約34万8000人だった。コロナ関連死の認定方法は国によって異なるため、単純な比較は難しいとされる。
◇            ◇

◆声上げられぬ医師たちは、その時…

 ロシアメディアによると政府はコロナ禍に際し、医療現場の情報を公にすることを医師らに禁じた。本紙は非公式のルートで、昨年の医療危機について複数の証言を得た。

モスクワの病院で昨年5月、防護服のまま休む医師

◆患者100人に医療関係者3人…まるで戦場

 クリミア半島(ウクライナ領、ロシアが2014年から実効支配)の女性医師 感染のピークは10月から12月。患者100人を看護師2人と助手1人が受け持つ状態でした。絶え間なく、患者の誰かに異変が起きて病院は戦場のよう。医療スタッフは8~9時間、ぶっ続けで防護服を着て、水も食べ物も口にできず、トイレすら行けませんでした。
 検査結果を1階に運ぶとき、エレベーターの中で座り込みました。休憩はその数秒だけ。
 重症患者は顧みられず、次々に亡くなりました。治療が終わるのは午前4時。患者からは苦情も脅迫も相次ぎました。
 私も仕事中、コロナに感染。気づかぬうちに家族全員にうつり、母は重篤な状態に陥りました。

◆月給わずか2万円、防護服もマスクもなく

 南部カフカス地方の女性医師 コロナ治療の指定病院ではない、一般の病院で働いていました。夏ごろから来院する3~5人に1人の割合で、コロナ感染者が見つかりました。秋には2~3人に1人までコロナ感染者が増えました。
 患者が搬送されるとCT検査などでコロナか確認します。コロナだと分かると指定病院に移送しました。そんな現場なのに、私たちは防護服も割り当てられず、マスクしかありません。
 指定病院では感染防止の装備もそろい、医師たちはより多くの給与をもらえるのに…。私もコロナの患者と接しているのに月給は1万4000ルーブル(約2万円)。夫が働いていなければ、高い給与を求めて職場を去っていたでしょう。

関連キーワード

PR情報

国際の新着

記事一覧