福島事故から10年 世界の原発は微増

2021年3月11日 06時00分
 東京電力福島第一原発事故から10年、世界の原発事情はどう変わったのか―。事故を受けて脱原発にかじを切ったドイツのほか、日本や欧米では廃炉が進む一方、中国では建設ラッシュや輸出が進み、全世界の基数は事故前からむしろ微増した。気候変動への危機感から、二酸化炭素(CO₂)を排出しない原発を支持する声も根強く、世界的な脱原発の道のりは険しい。(パリ・谷悠己、北京・坪井千隼)

◆新設目立つアジア諸国やロシア

 「福島の例から、重大事故の可能性を否定できないのは誰もが理解している。それでも原発建設を続ける国があるのは残念だ」
 今月上旬、福島の現状を伝えるオンライン討論会を開いたフランスの環境系NGO「クリラッド」代表のブルーノ・シャレイロンさん(56)が嘆いた。
 国際原子力機関(IAEA)によると、今年1月にインドで1基が送電を開始し、世界の原発は443基になった。福島事故前の2011年1月時点から2基増えた計算となる。
 古くから原発を保有する欧米諸国は老朽炉を新型炉に置き換える計画を描いていたが、福島事故の影響で頓挫。保有数が世界最多の米国や2位のフランスでも減少する一方、代わって新設が目立つのが中国などアジア諸国とロシアだ。

◆中ロが輸出競争を展開

 経済成長による電力需要の高まりで原発を増設してきた中国は、福島事故後しばらくは新設に慎重だったが、現在は50基が完成。日本を抜いて世界3位の原発大国に浮上し、今後さらに40基もの建設計画がある。
 フランスなど先進国を手本に技術開発を進めた中国は、近年完成した国産原発を「独自開発」だと主張。原発をハイテク産業育成方針「中国製造2025」の柱の一つに位置付け、国外輸出も加速させている。既にパキスタンで中国製原発が稼働を始め、アルゼンチンやトルコなどの原発新興国だけでなく老舗の英国にも販路を広げている。
 新型炉の置き換えが進むロシアも中国と競って輸出政策を進め、インドやイラン、ベラルーシでの新設に関与。文在寅大統領が脱原発を表明した韓国も建設中の原発の凍結には踏み切らず、過去10年で6基が運転を開始した。

◆CO₂削減が原発建設を後押し

 「CO₂の大幅削減を目指す国が増える中で、原子力が担う役割はより大きくなる」。経済協力開発機構(OECD)の原子力機関(本部・パリ)は今月上旬、福島事故10年を機に発表した報告書でこう言及した。
 温室効果ガス排出削減の国際枠組み「パリ協定」の順守に消極的だった中国が昨年9月、一転して「60年までにCO₂排出量の実質ゼロを目指す」と表明したことで、他国も野心的な目標実現を迫られている。
 フランス電力などは昨年末、世界30カ国での調査で、CO₂削減のため火力発電を原発に置き換えることへの反対が賛成を上回った国は日本とドイツ、イタリアのみだったと発表。国民の環境意識が高いとされるスウェーデンでは欧米最多63%が賛成したという。
 こうした潮流を受けて、IAEAは世界の原発の発電規模が50年に最大で現在の2倍に増大すると予測している。

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