<11日に考えた>釜石市や県内外で防災教育 「命守る行動 広めたい」群大大学院の金井昌信教授

2021年3月12日 07時21分

嬬恋中で防災の授業をする金井教授=昨年11月撮影(同教授提供)

 災害社会工学を専門とする群馬大大学院理工学府(桐生市)の金井昌信教授(44)は、十一日に十年を迎えた東日本大震災の津波に襲われる以前から岩手県釜石市で、震災後は群馬県の内外で防災教育に取り組んできた。「震災以降、防災教育の重要性は定着したが、災害が『わがこと』になっていない。まず命を守る行動ができる防災教育を広めたい」と意欲を見せる。 (市川勘太郎)
 金井教授は桐生市出身で、群大大学院の旧工学研究科で博士(工学)を取得。群大の元教授で、現在は東京大の片田敏孝特任教授に誘われ、群大の助手として研究を始めた。
 金井教授は震災前の二〇〇四年、群大当時の片田教授と釜石市で防災教育に取り組み始めた。初めは大人向けに講習会などを開いたが、顔触れは固定化。〇六年に長期的な視点で小中学生にも対象を広げ、震災後は「釜石の奇跡」と呼ばれる成果につながった。
 群馬県内では、一二年度から文部科学省が県に委託する「学校安全総合支援事業」で、地域に合わせた防災教育が進む。金井教授は防災アドバイザーとして参加し、一九年度は南牧村で登校中に地震が発生すると想定した訓練などに、二〇年度は嬬恋村で防災教育に協力した。
 一方、群馬県が一六年度に二十歳以上の男女約千七百人から回答を得た県政県民意識アンケートで、大地震の不安を「少し不安を感じる」と「非常に不安を感じる」は計75%に上った。ただ、食料の備蓄を問う項目に「用意していない」が55・2%と最も高く、地震の備えを問う項目には「家具などを固定していない」が61・2%と最多だった。
 こうした結果から、金井教授は「行動のスイッチ」を重視する。「備蓄は地震などで生き延びて役に立つ。家具の固定は家で自分の命を守るために効果的」と指摘。地震なら「物が落ちてこない、倒れてこない場所で頭を守る。水害も(高い場所への)垂直避難など命の危険性を瞬時に回避する方法を想定して」と呼び掛ける。
 金井教授は「群馬は安全神話が根強いが、日本に住む限り地震など自然災害と無縁な場所はなく、群馬は特に水の災害と共存する必要がある」と強調。「災害の状況を考え、何もしないと命の危険が及ぶ状況から一歩手前の助かる手段について年に一回は考えてほしい」と求めている。
<釜石の奇跡> 岩手県釜石市は東日本大震災の津波による死者・行方不明者が計1000人を超えたが、防災教育を受けていた児童・生徒たちは自主的に高台へ避難。約3000人のうち生存率は99.8%に達し「釜石の奇跡」と呼ばれた。市は遺族らに配慮し、後に「釜石の出来事」に改称した。

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