<ふくしまの10年・東京で暮らしていく>(4)音楽の力を再認識

2021年3月12日 08時02分

夫のフィリップさんと共演するゆかりマルシャンさん=東京都練馬区の生涯学習センターで

 いわき市から東京に避難して二年後に歌手活動を再開したゆかりマルシャンさん(49)は、音楽の力を再認識した。
 住んでいた地域による賠償金の有無などで、福島の人たちには細かな分断が生まれていた。立場は異なっても、一緒に聴けば音楽は共有できる。
 ジョン・レノンのイマジンを歌ったコンサートの後には、泣いて一人、二人と近づいてきて、思いを吐露していった。世界中で差別や戦争で苦しむ人々に寄り添ってきた音楽の歴史にも、思いをはせるようになった。
 「自分自身も音楽に頼って生きてきた。頼りがいがある。裏切らないっていうか」。もう一度歌うよう勧めてくれた娘たちからの贈り物だと感じる。
 二〇一五年、招かれてフランスに歌いに行った。パリのキャバレーで共演した、歌手でピアニストのフィリップ・マルシャンさん(55)と一九年に結婚。東京で一緒に暮らし始めた。
 二月、二人で共演した東京都練馬区でのコンサートは、福島の子どもたちの保養を支援する団体の主催だった。曲の合間、ゆかりさんは娘が一時、言葉が出なくなっていた時期があったと明かした。「四泊五日の保養に行った後、『ママ、こういうことがあったんだよ』とせきをきったように話した。保養続けてください。子どもたちは未来からのメッセージです」。そう語りかけた。
 東京は発信するにはいい場所だと思う。原発事故から十年たっても、いろんな解決していない問題がある。避難者への住宅の無償提供が次々と打ち切りとなっていることにも「勝手に決められてしまっている」と感じる。伝えられる機会には伝えたい。それでも「悶々(もんもん)と考えていくことにも疲れている」と漏らす。
 娘たちが学校を卒業するまであと数年。その後は地方への移住も含め、どう生きていくか考えてみたいという。
 ◇ご意見はfukushima10@tokyo-np.co.jpへ

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