<あの日から 東日本大震災10年>被災地の民俗芸能 支え つなぎ 守る

2021年3月12日 08時35分

2018年、岩手県の訪日外国人向けのプログラムから

 東日本大震災の被災地は民俗芸能や文化の宝庫といわれるが、存続の危機に瀕(ひん)する事例も多い。このピンチに「東北の民俗芸能の力に」と2人の男性が会社を立ち上げ東京から支援の活動を展開、地域の人たちに寄り添って継承の道筋を付けている。「3・11」から10年、「宝庫」を守るため、きょうも知恵を絞っている。 (藤浪繁雄)

鹿踊の装束を着用する小岩秀太郎代表

 会社は「縦糸横糸(たていとよこいと)合同会社」(本拠地は仙台市)で、小岩秀太郎(しゅうたろう)代表(43)と山田雅也副代表(40)が二〇一六年に創業。広い被災地の縦糸と横糸を結ぶ、コンサルタント的役割を担う。岩手県一関市出身の小岩さんは全国の民俗芸能の振興を目指す「全日本郷土芸能協会」(東京)に従事、生まれ育った地区に伝わる「行山流舞川鹿子躍(ぎょうざんりゅうまいかわししおどり)」を継承する。CMや映画製作などの仕事をする山田さんは、映像技術を生かした企画やプロデュースを得意としている。
 二人は一二年、復興ボランティアをしていた岩手県で知り合った。SNSなどのやりとりの中で「復興を進め人々の関係をつなぐためにも民俗芸能や文化は重要」との認識で一致、活動を始めた。
 二人は同県の訪日外国人向け伝統文化鑑賞と体験のプログラムなどで実績を積んだ。海外観光客らの関心を高め、民俗芸能の保存会を結ぶ役目も果たした。「自治体や保存会などの間にいたから、『つなぎ直し』の役割ができた。新しい交流のきっかけが生まれたと感謝された」(山田さん)。こうした取り組みに加え、凝った映像で目を引く発信技術も評価され、各地から依頼や相談が増えた。
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 被災地の沿岸部は規模の大小合わせて数多くの民俗芸能があるとされるが、震災後どれだけ途絶えたかなど、こうした調査も行う東京文化財研究所も把握しきれていないという。
 活動している団体も担い手不足は大きな課題だ。特に被災地では過疎や高齢化が加速。また、こうした芸能は祭礼や神事と深く関わるため、他地域の人の参加は難しいとされてきた。二人は依頼のあった地域に通う中で、その芸能の本質を重視した上で、可能な範囲で門戸を広げている。
 二人が携わる岩手県大槌町の臼澤(うすざわ)鹿子踊は、毎年九月の祭りで披露される勇壮で華麗な舞が人気だ。保存会には近年、他地域からの人も参加しているという。東谷(あずまや)一二三会長は「前会長に先見の明があったこともあるが、(二人が連れてきた)国内外の人の中には、喜んで手伝ってくれる人も出てきている」と話す。
 コロナ禍で祭りや公演は軒並み中止か延期。震災十年の今年も不安は残る。それでも小岩さんは「地域や民俗芸能のつなぎ役をつくっていきたい」と模索。山田さんは「地域の人たちだけで(自分たちのような)取り組みができるようになれば。理想は自分たちのような活動がなくなること」と活動を続ける。
 「縦糸横糸−」の活動は公式サイト(http://tateito-yokoito.com)から。

◆都内で実演 グッズ販売も

昨年11月、東京・神田明神で披露された「東京鹿踊」 (c)2020吉田弦彦

 昨年からのコロナ禍で小岩さんと山田さんの2人は現地に足を運びにくくなっているが、活動は続いている。
 昨年11月に東京都千代田区の神田明神で、「民俗芸能Now!」と銘打った公演があり、2人を含めた首都圏在住の有志が13年に結成した「東京鹿踊(ししおどり)」も出演した。疫病退散と安穏息災などを祈った奉納の舞を披露し、観客を楽しませた。小岩さんは「コロナ禍で大変な思いをしている各地の民俗芸能を見直してもらう契機になったら」、山田さんは「舞の動作にも意味があることを知ってもらえたと思う」と感慨を示した。

発売中のオリジナル手ぬぐい。岩手各地に伝わる鹿子踊の衣装からデザインした

 今年2月からは各地の民俗芸能活動を支えるためのオリジナルグッズの販売も始めた。売り上げの一部は民俗芸能の支援にあてる。第1弾は鹿踊(岩手県内各地)の装束をデザインした手ぬぐい(2420円)。今秋開催予定の「鹿踊応援イベント」の入場券にもなるという。3月には南部神楽(岩手、宮城)の面をモチーフにした封筒「包想紙」(1200円)も発売した。

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