<社説>福岡5歳餓死 特異な事件で済ますな

2021年3月13日 07時23分
 あまりに痛ましく、奇怪な事件だ。福岡県篠栗(ささぐり)町で、五歳男児を餓死させたとして、母親とその知人の女が逮捕された。周囲は異変に気付いていたが、児童相談所や町は有効策を打てなかった。
 保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕されたのはともに無職の母親(39)と知人の女(48)。母親は篠栗町のマンションで三人の息子と暮らしていたが、三男(5つ)に十分な食事を与えず、昨年四月に餓死させたとされる。二人は「ママ友」として知り合った。知人の女は母子の生活に深く関与し、食事の量まで管理していたという。
 マインドコントロール下とでも言うべき奇妙な支配関係だったようだ。知人の女は「あなたの夫は浮気している」と信じ込ませ、母親は二年前に離婚。その後もさまざま理由をつけては不安や孤独に陥れ、生活保護費など一千万円以上を巻き上げた疑いが持たれている。母子はわずかな食事を分け合うように生きていたという。
 毎年数十人の子が虐待死し、法整備とのいたちごっこが続く。警察庁によると、虐待事件は二〇一四年から急激に増え、二〇年は前年比8%増の二千百三十三件を摘発した。コロナ禍で親のストレスが子どもに向かった可能性が指摘され、過去最多を更新した。暴力や放置などで同七人増の六十一人が亡くなった。
 諸施策の柱は、虐待情報を受け付ける専用ダイヤル「189」の開設や、情報から四十八時間以内に児相が確認に出向くなど事態の早期把握だ。家庭内の問題として躊躇(ちゅうちょ)せず、行政や警察が積極的に介入するケースも増えている。
 その結果、とりわけ児相の責務は増している。人手不足による現場の疲弊も報告される一方で、子や親の現実を直視せず、組織に都合の良い解釈をするなど、依然として残る事なかれ主義や閉鎖体質を追及する元職員もいる。
 福岡の事件では、母子を心配した小学校や幼稚園、住民、親族が情報を寄せていた。児相や町は四十回、家庭訪問や電話などで状況の把握に努めたというが、なかなか本人たちに会えなかったようだ。五歳児が力尽きる一カ月前に面会できたが、三人にけがなどの外傷はみられず「差し迫った危険はない」と判断したという。
 福岡県は第三者機関を設け、事件を検証する方針だ。なぜ有効策を打てなかったのか、生活保護を担当する福祉事務所や警察との連携は十分だったのか、詳細が明らかにされなければならない。

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