「常識」問い直すNHKの夫婦別姓ドキュメンタリー 自分の家族にカメラを向けた映像作家の思い

2021年3月13日 08時06分
 東京都在住の映像ディレクター高橋敬明さん(40)が、自身の結婚に伴う姓の選択と、家族の価値観のズレをテーマに、2年半にわたって撮影したドキュメンタリー作品「夫婦別姓 “結婚”できないふたりの取材日記」が、NHKのETV特集で放映され、話題を呼んだ。どんな思いで自分の家族にカメラを向けたのか。映像に込めた思いを聞いた。 (砂本紅年)
 結婚したら女性が姓を変えるのが「当たり前」と思っていた高橋さん。二〇一八年、婚約者の神野(じんの)明里さん(27)にプロポーズしたところ、「結婚はしたいが、名字はアイデンティティー」と改姓を拒まれ、自分が改姓することを決意した。すると今度は両親から「嫁に来る女性が改姓するのが常識。姓を変えたら縁を切る」と激怒された。
 「名字への考え方の違いから、それぞれの家族観や人生観、生き方などが見えてきた」と高橋さん。自分や神野さん、両親が思いを吐露する姿を撮り続けることで、「名字って何だろう」「家族って何だろう」とあらためて考えるきっかけになると考え、撮影を始めたという。
 日本での姓を巡る歴史、国会の議論や裁判などについて調べ、別姓を貫くため事実婚をしている夫婦とその子どもらも取材。私たちが「当たり前」「常識」と思っていることの背景を解きほぐした。
 法律婚ができず、神野さんと事実婚の夫婦として暮らす高橋さん。「子どものころ『そんなことをすると恥ずかしいよ』と大人に教わってきたことも、本当にそうなのか。結婚と姓の選択に限らず、何か違和感があるなら、ちゅうちょなく立ち止まって考えてほしい」と呼び掛ける。
 放映後、「多様性を肯定する内容が良かった」「気持ちが楽になった」などの声が届いた。番組中、選択的夫婦別姓制度の導入に現役時代から反対してきた亀井静香元衆議院議員に、二人がインタビューする場面では「日本はな、天皇の国だよ。民がさ、夫婦が姓が一緒だ、別だなんて言うこともないんだよ。みんな天皇の子だから」などの亀井氏の発言について、「悔しい」「やばかった」などとSNS上で物議を醸した。
 高橋さんは「個人をたたくのが本意ではない。異なる意見が理解できなくても、いがみ合うのではなく、同じテーブルでそれぞれの意見にしっかりと耳を傾けることの大切さを伝えたい」と話す。今後も選択的夫婦別姓を巡る動きを追って、カメラを回すつもりだ。

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