普段着になる防災服を開発 3.11で宮城の自社工場被災が転機に

2021年3月13日 14時00分

オーバーオールと追加のエプロンを使って飲料水を持ち上げる竹内さん(左)と発案した長嶋さん=横浜市港北区で

 災害時の避難や救助活動の際の機能性を重視した「フード付き多機能オーバーオール」を、ホテルやレストランなどの制服の企画・製作を手がける「エムズ」(横浜市港北区)が開発した。宮城県南三陸町にある同社の工場は東日本大震災で被災し、従業員も犠牲になった。震災から10年となるのを前に、生存率を上げる商品開発を目指したという。「普段からかっこよく着られて、防災に目を向けられるように」という願いも込めた。(杉戸祐子、写真も)

前身頃のファスナーが大きく開き、着脱しやすい構造になっている

 開発の中心は、本社でホームページやチラシなどを担当するグラフィックデザイナー長嶋一憲さん(49)。昨年5月ごろ、「被災した会社として、あらためて震災とどう向き合うか。人々の生存の確率を上げられる商品を作れないか」と考え始めた。震災当時、従業員約50人が働いていた南三陸町の工場は、震度6弱の揺れに見舞われて多数のミシンが壊れ、家族などの様子を確認しようと自宅に戻ろうとした2人が津波で亡くなった。
 目指す製品の手掛かりを探そうと従業員らにアンケートした。「あっという間に黒い津波が来た。避難にはスピードが大事」「普段から着慣れていないと間に合わない」
 災害時の機能性と日頃から着られるファッション性の両立―。コンセプトが決まった。
 オーバーオールなら、前身頃のファスナーの開閉だけでズボンやスカートの上からすぐに着られる。素材は耐久性や撥水性に富んだナイロン「コーデュラ」。避難用品で手がふさがることのないよう、太もも付近に外付けポケットを配置した。パスポートや通帳などの貴重品用に背中の内側に隠しポケットを設けた。

太もも付近に外付けポケットを装着できる

 「避難する時に高齢者やけが人を背負った」という声から、背中はおんぶしやすいフラットな構造にした。「避難所のトイレの衛生環境が悪かった」という体験談から腰回りにファスナーを付け、全体を脱がなくてもおしり部分が開くように工夫した。
 災害時の視認性を高めつつ、キャンプなどのアウトドアや街中で普段着としても使ってもらえるよう、黒とカーキの2色展開に。着脱可能なフードは片面を鮮やかな黄色にし、反射テープも施した。「多機能サロン」と名付けた別売りエプロンを使えば、てこの原理で、土のうやがれきなど重い物を持ち上げやすくなる。
 商品名は「MOVESME」(ムーブズミー)。「私を突き動かす」という意味合いだ。長嶋さんは「いざというときにとっさに動けるようにし、助かる人を少しでも増やしたい」。プロジェクトを率いた竹内聡介管理本部長(40)は「多くの人に着てもらい、日頃から防災意識を持ってもらえたら」と期待を込める。
 2月から販売を開始。オーバーオール本体と外付けポケット2つのミニマムセットで、3万9500円(税・送料込み)。多機能サロンは1万2500円(同)。サイズはSS~3Lの6段階で、身長150~186センチぐらいに対応。詳細はウェブサイトか、エムズ=電045(476)3500=へ。

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