CO2出さず、災害にも強いのに…福島・飯舘村民がつくる再生エネ発電所に吹く逆風

2021年3月14日 06時00分
 10年前の福島第一原発事故をきっかけに福島県では「原発に頼らない電気をつくろう」と市民自ら太陽光など再生可能エネルギー発電所を設立する動きが広がった。しかし、政府支援は薄く、ここにきて市民参加型の地域発電所は停滞する。「2050年温暖化ガスゼロ」を掲げる菅内閣だが大企業主導の政策に傾斜し、小規模発電の活用が課題に浮上している。(池尾伸一)

飯舘電力のソーラーシェアリングの設備(手前)と除染廃棄物の仮置き場

 17年3月まで全住民が村外避難させられていた飯舘村。6500人の住民が1500人しか戻ってきていない村の各所に放射性物質の汚染土を詰めた袋が山積みのままだ。その一方で目立つのが太陽光発電のパネル。村民らが出資した「飯舘電力」の小規模発電所。1基あたりは約50キロワットと、15世帯分に相当するだけだが、いま村に49カ所の発電所がある。太陽光パネルの下で牧草などを栽培するソーラーシェア型も多い。計2500キロワットと、帰還した全760世帯分の電気に相当する計算だ。

育牛農家の小林稔さん

 主導したのは育牛農家の小林稔さん(68)。電力には素人だったが、放射能汚染で村の農業が困難になると心配。「村民が収入を補う手段が必要」と村民の出資を募り発電会社を設立した。村民から借りた土地で発電した電気は東北電力に売り、収益は村民への地代や地元復興支援に活用する。
 会津でも酒造店当主らが呼び掛けて「会津電力」が発足。土湯温泉では旅館経営者らが温泉の湯気を使い地熱発電所をつくった。いずれも市民が出資や運営に参加、収益を地元貢献に活用するのが特徴。市民参加型電力は「ご当地電力」として全国に広がった。
 だが最近は伸び悩む。飯舘、会津両電力合計で17年度は29の発電所を新設・稼働させた。だが、20年度は3カ所だけ。新設はほぼ止まりつつある。
 背景にあるのが電力価格の引き下げ。再エネは大手電力などが固定価格で長期に買い取る固定価格買い取り制度で拡大してきた。だが経済産業省は「消費者負担が重い」として、当初1キロワット時40円前後だった太陽光発電の買い取り価格を最近では12円にまで下げた。この価格だと新設発電所は採算割れしてしまうのだ。規模拡大でコストを下げれば採算は合いやすいが送電線を持つ東北電や東京電力は出力50キロワット以上の発電所は「送電線に余裕がない」と接続を拒んでいる。
 政府の温暖化ガス削減策は大企業主導の洋上風力発電や原発の再稼働が柱。金子勝立教大特任教授は「小規模分散型発電は地域の自然や農地を活用しやすく災害にも強い。政府や大手電力は送配電網を欧州並みに高度化して地域の電力会社を生かすシステムを構築すべきだ」と提言する。

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