「グリーン水素」国挙げて推進、CO2ゼロで「世界のリーダーに」<脱原発の行方 ドイツの選択>④

2021年3月14日 06時00分
 ドイツ北部の港湾都市ハンブルク。広大な港の一角にある「モーアブルク石炭火力発電所」は昨年末、運転開始から、わずか5年で稼働を停止した。出力は発電設備2基合わせて約1600メガワット。原発1基分を超える発電能力を持つ新鋭発電所が、なぜ閉鎖を余儀なくされたのか。
 「収支は少なくとも今後3年間、マイナスが予想された。脱石炭は、われわれの戦略に沿ったものだ」。発電所を運営するスウェーデンのエネルギー大手「バッテンフォール」の広報担当者は説明する。
 ドイツは脱原発と並行して2038年までに脱石炭を進め、50年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げる。石炭火力は二酸化炭素(CO2)の排出権価格が上昇し、発電コストが増大。大手電力は再生可能エネルギーへの転換を迫られているのだ。
 その発電所跡地に今年1月下旬、再生エネを利用して水素を製造する欧州最大級のプラント建設計画が発表された。バッテンフォール、英蘭石油大手ロイヤル・ダッチ・シェル、日本の三菱重工業などが参画。100メガワット規模の水電解プラントを建設し、水素を供給・利用する拠点「グリーンエネルギーハブ」とする狙いだ。
 運転開始は25年ごろが見込まれ、ハンブルク市(州に相当)のイェンス・ケルスタン環境・エネルギー相は「気候変動対策の目標を達成するための大きな力になる」と期待する。
 ドイツでは今、こうした水素社会を見据えたプロジェクトが続々と立ち上がっている。後押しするのが、独政府が昨年6月にまとめた「国家水素戦略」だ。水素を脱炭素化のカギとなる技術と位置付け、総額90億ユーロ(約1兆1700億円)の予算を確保した。
 ドイツの温室効果ガス排出量は日本に次いで世界第6位。発電などのエネルギー、運輸、工業の3部門が排出量全体の75%を占める。水素戦略では、温室効果ガスを排出しない再生エネを利用する「グリーン水素」を重視。公共交通機関や物流などで使われる化石燃料や、鉄鋼・化学工業の原料を水素に置き換えることで脱炭素化を進める。

ドイツでは2018年からディーゼル列車に代わり、水素を使う燃料電池列車が営業運転を始めている=独北西部ニーダーザクセン州で、近藤晶撮影

 独フラウンホーファー研究機構のマリオ・ラグウィッツ教授は「水素は世界的なエネルギー転換に寄与する。ドイツは、その分野で先駆的な役割を果たそうとしている」と指摘。戦略には水素技術を輸出産業に育て、経済成長につなげる狙いもある。予算90億ユーロのうち20億ユーロを国外投資に振り向け、中東・アフリカなどからの水素輸入も視野に入れる。
 アルトマイヤー経済・エネルギー相は水素戦略を発表した記者会見で、こう強調した。「ドイツが水素技術で世界のリーダーになる道を切り開く」(ベルリン・近藤晶)

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