再生エネ普及に挑む福島の人たち、苦難にめげない草の根の工夫

2021年3月14日 06時00分
 福島第一原発事故をきっかけに、市民自ら再生可能エネルギー発電所を設立する動きが広がった福島県。人々が立ち上がった背景には原発に頼らない電気を目指す強い思いと、草の根の工夫があった。地域発電を育てる環境を整えるには、大手電力会社が送配電網を独占する体制をどう改革するかもカギを握る。(池尾伸一)

◆豪雪の懸念、実験で払拭

 地域の再エネ発電所が軌道に乗るまでには幾多の壁があった。会津電力のある会津地方は、2メートル以上の雪が積もる豪雪地帯。当初は「冬の間は発電できなくなる」との固定観念から銀行やパネル製造会社が協力を渋った。 
 居酒屋経営をやめて同社に参画した折笠哲也さん(現常務)は実証設備を手作りし、ひと冬の間、観察を続けた。その結果、太陽光パネルの設置角度を30度にすれば、発電を妨げる雪が滑り落ちることを突き止めた。「豪雪地帯でもパネルの角度次第で発電できることを証明したことで銀行などが協力してくれるようになった」と振り返る。
 大手電力との折衝も苦難の連続。2014年9月、飯舘電力が発足したのと同じタイミングで、東北電力など大手電力は一斉に「これ以上太陽光発電は受け入れられない」と発表した。
 飯舘電力は、大規模な太陽光発電建設に向け、村民から用地を借りる同意を取り付けていたが断念。送電線への負荷が少ない50キロワット未満の小規模発電所を多数造る方針に切り替えた。

◆「送配電網の開放」がカギに

 地域の発電会社を十分に生かすためには、送配電網の環境整備が大きなカギを握る。
 欧州連合(EU)では、各国の送配電会社が、再エネを優先接続するよう定めたルールがある。送配電網と発電所を同じ会社が運営していると、自社の発電所を優先しがちなため、送配電会社と発電会社の経営は分離されていなければならないことも決まっている。こうしたルールを追い風にドイツや北欧では、地産地消型の小規模発電所が急速に数を増やしている。
 日本では送電線は東京電力や東北電力が子会社などを通じて所有。いつ再稼働するか分からない原発のために送電網の空きを確保するなど不透明な運営が続く。
 電力政策に詳しい環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は「送電会社と発電会社の分離で送配電網を開放する一方、農地利用も容易にするなど政策動員して地域分散型発電を伸ばすべきだ」と指摘している。

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