高線量下の捜索現場、建物なくなる商店街…市民の目線で考える原子力災害考証館、福島・湯本温泉に開館

2021年3月14日 06時00分
 東京電力福島第一原発事故では、原発のある福島県双葉町、大熊町だけでなく、広い地域で直接的、間接的にさまざまな人々が被害を受けた。そうした人々が何を思い、どのように行動したかを展示や資料を通じて考えるための拠点「原子力災害考証館furusato」が12日、福島県いわき市・湯本温泉の旅館「古滝屋」に開館した。(福岡範行)

浪江町の商店街の変遷を写したパノラマ写真。建物が解体され、更地になった様子が伝わる=いずれも福島県いわき市・湯本温泉の旅館「古滝屋」で

 宴会場だった20畳の部屋の壁一面に、原発事故で全住民が避難を強いられた浪江町の商店街の変遷を写したパノラマ写真が並ぶ。この10年の間に建物が解体され、更地になったことを伝える展示だ。

福島県大熊町沿岸部で亡くなった木村汐凪ちゃんの写真や遺品の展示。奥の白黒写真はボランティアによる捜索風景

 部屋の中央には、福島第一原発がある大熊町沿岸部で亡くなった木村汐凪ゆうなちゃん=当時(7)=の写真や遺品のランドセルがあった。津波に遭った後、放射能汚染で迅速な捜索を阻まれ、遺骨の一部が見つかったのは震災から5年半後。汐凪ちゃんら家族3人を津波で失った父親の紀夫さん(55)が遺品を貸してくれた。
 考証館では、来館者が自分の身近なことに置き換えて考えられる展示を目指している。資料は被害に遭った人々らの記録が中心。被災を詠んだ歌集や放射能汚染に苦しむ農家を追った写真集、訴訟の記録誌などもそろえる。浪江町の写真の下には、市民グループが毎年測定した同町の放射線量マップも置いた。今後も情報を更新しながら、3カ月に1度は展示を替えていくという。
 「生きるために動かざるをえなかった人たちの声なき声を集めている」と、事務局を担う地域づくり団体職員、西島香織さん(33)。長女出産後の19年9月、埼玉県内から帰還困難区域が残る富岡町に移り、子育て支援や被災の状況を伝える人たちの熱意に驚かされたという。

障害者の被災経験をつづった本を紹介する里見喜生さん。原子力災害考証館には里見さんらが収集してきた本を置いた

 考証館長で古滝屋当主の里見喜生さん(52)は「暮らしがどう変わり、人々がどんな思いでいるのか、現地に行って感じてほしい。考証館を訪ねてもらえたら、関心に合った場所を紹介したい」と語った。
 開館は午前10時~午後4時。不定休。宿泊客に限らず入館無料。原発事故にまつわる本や映像作品は目録をつくり、考証館のウェブサイトでも紹介する。古滝屋はJR常磐線湯本駅から北西の温泉街に徒歩8分。

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