<社説>デジタル法案 個人情報保護が先決だ

2021年3月16日 07時49分
 デジタル関連法案の審議が始まった。デジタル化には利便性向上の利点とプライバシー侵害の危険が併存する。今回の法案には後者への配慮が欠けていないか。個人情報保護の確立が先決だ。
 コロナ禍で消費や交流のオンライン化が進み、感染予防には移動監視が試された。このデジタル化の流れに乗じ、政府は「デジタル庁」を司令塔に、官民で個人情報の統合を図ろうとしている。
 しかし、国民には個人情報を国に握られることへの警戒感が根強い。五年前に配布が始まったマイナンバーカードの交付率は約26%。この数字が国民感情を示している。
 国民の不安をぬぐうことが大切だが、政府にはその姿勢が欠ける。関連法案の一つ、デジタル社会形成基本法案の目的には「国際競争力」「利便性」の言葉が躍るが、個人情報保護の文言はない。
 文言にとどまらない。関連法案は、住民基本台帳ネットワークやマイナンバーカードの発行管理に携わる地方公共団体情報システム機構を、国と地方自治体の共同管理法人に変えるとしている。
 従来、同機構は地方自治体の共同法人だった。理由がある。住基ネットの創設時も国が個人情報を一元管理するのでは、と懸念が強かった。このため、小渕恵三首相(当時)は「地方公共団体共同の分散分権システム」を強調し、国民総背番号制とは異なると国会で答弁。現在の形態になった。法案はこの経緯を無視している。
 かねて産業界は分散システムがビッグデータの形成や活用を妨げていると不満だった。法案には、預貯金口座とマイナンバーカードのひも付けやデジタル庁への民間からの大量登用が記された。産業界におもねっていないか。国に先駆けて、個人情報を守ってきた地方の議会から慎重審議を求める意見書が相次いでいるのは当然だ。
 世界は個人情報保護の強化に動いている。欧州連合(EU)は二〇一八年に一般データ保護規則を施行。個人が自己情報を管理する権利と独立機関による監督を規定した。米国でも一六年の大統領選以来、巨大IT企業が持つデータの流通が投票行動をゆがめていないか、論議になっている。
 重大なテーマであるのに政府が「束ね法案」で提出し、審議を急ごうとしている点も看過できない。関係資料には四十五カ所のミスも見つかった。拙速に過ぎる。十分な審議と個人情報が脅かされないような法案の修正が必要だ。

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